僕の屋敷は広大で敷地もそれなりに広いので、あちらこちらに世界のモニュメントを模した建物がある。
建物だけでは大変味気ないので実際に利用している建物もあるわけだが、なかでも神社仏閣教会などは地域の人々の信仰を集めているらしい。
むろん観光目的で訪れる人たちもいるが、うちの敷地と気づいてはいない。
人々に説教したり説法を聞かせたりお祓いをしたりしている僧正や神主も実は我が家の使用人であるが、そのことは部外秘となっている。
まぁマスク姿でぞろぞろ来られるのもどうかと思うので、神頼みはそこそこにしてもらえるとありがたい。
「旦那様、今週末は例の集まりでございますが、予定通りでよろしいでしょうか?」
坂崎が念押しするように僕に尋ねてきた。
「構わないよ、予定通りで。」
「畏まりました、そのようにいたします。」
敷地内の僧正神主らを集め親睦を図るために我が家においてポーカーをするのだ。
改めて開催を告げるため、電話掛りと共に坂崎は磨き上げた純金製の馬鹿でかい電話へと向かう。
重労働ご苦労様である。
3人の司教神主坊主に僕を含めた4人でのポーカーには純金製のチップを使い、それをそのまま持ち帰らせているのでだんだんと本性がむき出しにされていく姿を眺めるのも、また一興である。
「だ、旦那はん、ここでレイズっちゅうのはなんや強気でおまんなぁ」と司教。
「ふっ」(僕はあくまでもポーカーフェースである)
「ここで降りる手はない、御仏もご存知じゃ」と坊主。
「坊主丸儲けにはさせませんぞ!神々よ!ご照覧あれ!!」これは神主。
「勝負だ。カードを見せたまえ」
「ぐぉーーーー!エースとキングのツーペアが!!悪魔め!!」
「神も仏もないものか!!」
「祟ってやるー呪ってやるーーーー!!!」
阿鼻叫喚のなか坂崎が手早くチップを回収する。ギラギラとした目でチップを眺める我が家のビショップたちに僕はこう告げる。
「すまないね、僕の手の内はいつもフルハウスなのさ」
がっくりと肩を落とした3人が退散した後に、坂崎がにっこりと笑いかける。
「旦那様、見事なカードコントロールでございました。」
「君の直伝だからね、見破れるのは坂崎だけだと思っていたさ。」
そして今日もまた平穏な一日が終わるのであった。