仕事の帰り際、妙な男が訪ねてきました。
悟りの講習を一方的に気分良くまくしたてて来るのです。
どうやら、人は学習するために生きていると言うのです。
実は昔の友人です。
随分と久しぶりに顔を合わせたかと思うと、なんのこっちゃない。
たとえ生臭坊主だとしても似つかわしくない男なんです。
昔は宗教の悪口を辺りはばからず吠えたおすような奴で、その話題だけは避けようと必死でした。
それが、「悟ったぞー!」なんです。
「輪廻はあるよ」と東京弁で。驚きました。私以上に超現実主義だった男が。。。。。
「学ぶというのは棘を削いで、欲を捨ててまあるくなること」だそうで、それが一生のうちに出来なかった人が何度も生まれ変わるのだとか。
そして面白いのが、おそらく凶悪犯罪者の多くは、実は悟りが開けた人が嫌な役目を立候補して生まれ変わっているらしいのです。勉強させるために。
約15年ぶりの再開。
この友人に何があったのか?よほど辛い経験でもあったのか、と酒を飲みながら貰い泣きしそうにもなりました。
しかし、肝心の本人は楽しそうでへらへら。
「みんなに伝えたくてね。特にお前はニーチェやマルクス好きだったろ。それにお前は自由を求めるだけで欲薄いじゃん」
ニーチェやマルクスはおそらく悟りの境地にいた人らしいのです。その後は余計なお世話ですが。
「で、仕事は?」と聞くと、「友達巡りするから止めた」
私よりも自由人。
「悟りが開けてから投資でぼろ儲けしてね」
「いや、欲丸出しやんか?」
「だから、投資も止めたよ」
私も早く悟りが開けて、競艇や競馬でボロ勝ちしたいです。
楽しそうな方にばかり目を向けている私は有難味なんて何も分からないのですが、とにかく元気そうで何よりでした。
それと、仙人のような人が輪廻転生して凶悪犯になる件は、ファンタジーとしてとても面白かった。
そういう小説ないかなぁ?