ゴキュ!
シャシャの丘で薄気味悪い音がしたと同時に、魔女シャシャが箒から叩き落された。
気絶しているシャシャを見下ろしているのは、右手を血に染めた女である。
服装は悪の組織の大幹部そのものだ。
「ざけんじゃねぇよ……!」
低い声で、けして上品ではない言葉を口にする。
女は辺りをはばかったりはしなかった。
相手はシャシャである。
この魔女に泣かされたMILU村の住人割合は、ほぼ100%だろう。
暴力沙汰の現場を目撃されたとしても、
シャシャへの恨みつらみから通報されることはあるまい。
女は手元に残った血の付いたナットをポケットにねじ込んだ。
女が足音も荒く丘を下ると、身なりの良い少女が視界に飛び込んで来た。
資産家で有名ないわさき家の希花嬢である。
女は内心でニヤリと笑い、希花嬢を呼び止めた。
「待ちな」
最低限の言葉数しか使わない。
希花嬢は相手が誰か認めると、真っ青になってその場に立ちすくんだ。
「あんた、これ買うだろう?」
女は素早く希花嬢の肩を抱き、ドスの効いた声で囁いた。
「ナットだよ、品薄の…… 安くしておく」
悪の組織の大幹部のような恰好をしていても、
やっている事はヤの字の付く自由業の下っ端と変わらない。
「ヤク、いらね?」と同じノリだ。
女は相場より安い金額を提示したが、希花嬢はなかなか首を縦に振らない。
そこで女はさらに声を低くして言った。
「いわさき氏の秘密を地域で吹聴してもいいんだね?」
資産家いわさき氏の秘密とは何か。
実は女は何も知らない。
ただ、資産家である以上はなにがしかの秘密がありそうだと、カマをかけただけである。
希花嬢は、自分も知らない父の何かを女が知っているのかもしれないと想像し、
父の名誉を守るためならとナットを買う事を承諾した。
女は血で汚れたナットを希花嬢に握らせた。
「こ…… これ、どなたの血ですの!?」
希花嬢が鋭く聞くと、女は視線を逸らして言った。
「知らない方が身のためだね」
月に代わってお仕置きされたり、〇〇ライダーにフルボッコにされたり、
××レンジャーに爆散させられたりするのがイヤだった女は
素早く希花嬢から札束を受け取ってその場を立ち去った。
了
【配役:書く必要は無い、はず……】