幼い頃の、僕の口癖は「うそぉ~?」だった。
言葉を理解して使っていた訳ではない。「びっくり」や「すごいねぇ」ぐらい
の意味合いで口を出ていたのだろう。
「そんな言葉、使うんじゃない」。小学校に入る前の僕に、温厚な祖父が
珍しく声を荒げた。帰省していた時のことだった。
半べその僕へ、普段のにこにこ顔に戻った祖父が言う。
「人を『嘘つき』呼ばわりしちゃいけんよ」。
気がつくと「うそぉ~?」を言わなくなっていた。祖父の言ったことを分かっ
た訳ではないだろうが、子供ながらに「むやみと使っちゃいけない言葉」と
感じたのだろう。
なぜ祖父が「うそぉ~?」を嫌っていたかは、今となっては聞きようもない。
祖父が幼い頃、親に嘘をついたことがばれて、丸々2日間も物置に入れ
られていた話を後日聞いた。それだけとは思えないが、一方、祖父の一言
でそれからの40数年、僕はその言葉を使っていないのも事実。
口癖に限らず、癖の多くは自分では分からない。悪癖を諭してくれる相手
が欲しいものだ。