◇ 小島楓(医局長) … 松嶋菜々子 39歳。救命救急医。国立湊大学附属病院救命救急センター医局長。海南医大高度救命救急センターでは、4年前に若くして医局長に就任した楓の元、スタッフを増員し充実した医療体制が整えられていた。その実績を買われ、厚生労働省下の救命改革機構に委員として参加することが決まった矢先、東日本大震災が発生。医局長という立場のため被災地へは向かえず、羽田空港で被災地から搬送される患者を待ったが、ほとんど患者は運ばれず、テレビ画面の中で増え続ける死亡者数に、救命医としての無力さを思い知らされる。2012年10月、東京都の救急医療改革の要として、国立湊大学付属病院に、24時間体制の全科救急診療(ER)を備えた救命救急センターが誕生。全国から第一線の救急専門医を集め、日本の救急医療の最先端モデルとして運用されることとなり、最上院長からの誘いを受け、医局長として楓が迎えられた。ところが、「医療は専門研究にあり」という古い体質が残る国立大学病院では、急ごしらえの傭兵部隊である救命救急センターに対する他科の風当たりが強く、さらに湊大出身ではない楓が医局長としてスカウトされたことを面白く思わないスタッフもいる中で、楓自身も管理職としての自分の立ち位置に不安を感じていた・・・。国立大のメンツを保つため、臓器提供例が欲しい病院長の最上透は、トップクラスの救命率を誇りながら、脳死臓器移植を多数実現させている北陸の救命救急センターがあることを知り、そこで“看取り医療”を行っていた救命医・夏目衛を招聘することを決定する。「命を救う」仕事と「命を看取る」仕事、一見相反するように思える二つの救命の間で葛藤する楓は、夏目との出会いの中から次第にその答えを見出していく・・・。
◇ 本庄雅晴(救命救急医・心臓外科医) … 佐々木蔵之介 44歳。国立湊大学附属救命救急センター救命救急医。心臓外科を標榜。「救命医が脳死を認めるのは、負けを認めるのと同じだ」と豪語。さすがにその主張はいかがなものかと、周りから白い目でみられているが、まったく関知していない。縦割りの組織論が横行する日本の大学医局になじめずに、研修医時代から渡米。もちまえの快活さ、粘り強さと根性で、ERの使い走りからキャリアをスタートする。たたき上げで実力はあるのだが、もちまえの短気なキャラクターが災いして、かの地でもやっかいもの扱いを受け、最終的には帰国の憂き目にあう。湊大救命救急センターの中では、楓が来る前の実質的なリーダー格だったが、昨今の若手医師に対する労務管理や教育方針をめぐって、医局長になった楓とはことある度に衝突しがちである。仕事と同じくらい、酒が好き。しかし、どんなに飲んでいても救急コールには、駆けつける。元看護師の妻とのあいだに4人の子どもがいる。子煩悩。家庭は円満。湊大救命センターに夏目が招かれ、「心臓死は人の死」と考えてきた本庄の価値観は大きく揺さぶられ、救命医療に対する自らの信念にも疑問を突き付けられることになる。
◇ 広瀬斎(後期研修医) … 風間俊介 30歳。国立湊大学附属救命救急センター後期研修医。呼吸器外科を標榜。自分から意欲的に救命救急センターを志願してきた、期待のホープ。「ゆとり世代」ではないのだが、なにかと一緒くたにされることに、日々、憤慨している。ドクターカーの要請に、真っ先に飛んでいくフットワークの良さが長所。前向きに仕事に取り組んで、色んなことにチャレンジしていくため、場合によっては研修医の身分を超えた領域に手を出してしまうことも。一番の短所は、生真面目であるが故に応用力に欠け、融通が効かないこと。ちょっとした非常事態でもすぐテンパってしまう。心根は優しく楓に対しての本庄ら医局員の突き上げに対しては、やや引き気味の態度を取っている。救命救急センターの中では、イジりの対象になりがち。
◇ 奈良さやか(後期研修医) … 芦名星 29歳。国立湊大学附属救命救急センター後期研修医。消化器外科を標榜。普段から冷静沈着な仕事ぶりで、上司からの信頼も厚い。同じ女性として、救命医として名実ともに活躍している楓を尊敬しており、湊大に救命救急センターが新設されると聞いて真っ先に手を挙げたのも、医局長に楓が呼ばれたことを知ったからである。心の中では勝ち負けにこだわり、同世代の広瀬と比べられることに実は不満を抱いたりもする。周りには見せないようにしているが、性別が理由ではなく、医師というステージで到底一番にはなれないことを察して苦悩している。影の努力家。恋愛経験は豊富だが、長続きしないことが多い。プライベートは大切にする主義。
◇ 片岡仁志(救命救急医・整形外科医) … 柏原収史 34歳。国立湊大学附属救命救急センター救命救急医。整形外科を標榜。父親は、大病院の理事長。泣く子も黙る、片岡家の一人っ子として育つ。ワンマンな父親の顔色をみながら幼少期を過ごしたため、争いごとを嫌い、中庸を好み、常に落とし所ばかり探してしまう。また救命救急センターきっての情報通で、噂話が大好物。誰にでも優しく接するため女性(特に患者)には惚れられやすく、現在までに三度結婚。二度離婚。現在は三度目の離婚調停中。
◇ 安藤直利(救命救急医・麻酔科医) … 児嶋一哉 41歳。国立湊大学附属救命救急センター救命救急医。麻酔科を標榜。麻酔科からひとり、救命救急センターに人員を出さなければならなくなった際に、転属命令がくだって移籍してきた。自ら救命救急センターを志願してきたわけではないので、意欲は薄い。自分よりも年下の楓の部下に配属されたのも気に食わない。ただ国立大の附属病院を退職して、他の道をさがすだけの度胸もないのが本音。人と話すのが苦手なだけのかまってちゃんだが、麻酔科医としての腕は一流で、実は誰よりも救命センターの人間関係を見抜いてもいる。
◇ 夏目衛(救命救急医・臓器提供のスペシャリスト) … 時任三郎 55歳。国立湊大学附属救命救急センター救命救急医。脳外科を標榜。元来生真面目な性格だが、自己主張が弱く、自分の考えを表に出すタイプではないため、変わり者と思われがち。周りの人や状況を冷静に見ている切れ者で、状況によっては核心をついた指摘を遠慮せず発言するため、慇懃無礼だと受け取られることもしばしば。PCPS(経皮的心肺補助装置)を用いた救命措置を積極的に行い、以前勤めていた病院の救命救急センターは、全国でもトップクラスの救命率を誇る。一方で、徹底的に患者とその家族に寄り添い、終末期までが救命医療の役割であるとの考えから、病院を挙げての「看取り医療」を行うようになってきたことから、自然と脳死臓器移植の提供例を多く出すようになる。湊大の救命救急センターに赴任する半年前、それまで勤務していた北陸の病院を突然、辞職。救命医療の表舞台から姿を消していた。最上院長から、「臓器提供のスペシャリスト」として湊大に救命を支えてほしいという申し出があり、一度は固辞するも、個人的な事由から依頼を受ける。
◇ 国友花音(看護師) … 波瑠 23歳。国立湊大学附属救命救急センター看護師。次世代のホープ。どれほど仕事で辛い目にあおうと、ハートが強いため、決して心は折れない。仕事上で自分の意思ははっきりと主張するタイプ。高齢化社会の日本の医療は今後、看護師の役割が医師に勝っていくという進んだ仕事観を持っている。そのため研修医の広瀬やさやかとは表面上仲が良いが、心中では医者に負けたくないとライバル視している部分も。母親とは離れて暮らしており、確執を抱えている。
◇ 美木麻衣子(看護師) … 岡本玲 24歳。国立湊大学附属救命救急センター看護師。目立つタイプではないが着実に仕事をこなしており、楓からの信頼は厚いが、後輩の花音や男性看護師らが前に出て活躍するのを見て、引け目を感じている。人と揉めることが嫌いで、自分の主義や主張を押し通すことはしない。患者やその家族に対しての細かい気遣いは、誰よりも丁寧だが、時に面倒な患者からはクレームを言われっぱなしになることも。
◇ 中澤千秋(看護師) … 山田真歩 31歳。国立湊大学附属救命救急センター看護師。看護師の仕事はそつなくこなすが、女性の生き方は仕事だけではないと思っている。プライベートで家庭を持つ事も夢見ながら仕事に励んでいる。麻酔科医の安藤と、ひそかに交際中。安藤の良さは自分にしか理解できないとも思っている。
◇ 駒沢幹雄(看護師) … 夙川アトム 35歳。国立湊大学付属病院救命救急センター看護師。今では珍しくない男性看護師のひとり。男性であるがゆえに力仕事を任されることが多いが、いつも何かと間が悪く肝心な時に活躍できない。看護師としていつか医者に負けない給料を取るため、行く行くは看護部長として湊大病院の副院長の座につくことを目指しているキャリア志向タイプ。
◇ 桜庭睦子(看護師長) … 安寿ミラ 47歳。国立湊大学付属病院救命救急センター看護師長。若手時代から「医者より有能」と、その名を轟かせ、アメリカに留学してナース・プラクティショナー(NP)の資格を取得したエリート看護師。現在は医学部看護学科の教授も兼務している。独身。結婚歴なし。公私ともに完璧をこころがけ、人に弱みをみせず、努力を惜しまない誠実な女性。昔なじみである最上からの信頼も厚く、救命救急センターの状況を頻繁に報告している。楓のことは同じ女性として、応援したいと思っているが、医療者の先輩としては国立大の救命センター医局長という仕事は、彼女には荷が重いのではと思っている。
◇ 永井栄子(移植コーディネーター) … 伊藤裕子 38歳。臓器移植コーディネーター。救命救急センターに運ばれた患者が脳死となり、移植についての話を聞きたいと家族が希望した場合に、病院に来て説明を行う移植コーディネーター。臓器提供の実績を作りたいという最上院長の考えに手放しで賛同してはいないが、これからの移植医療を発展させるためにも、必要なことだと考えている。
◇ 杉吉康弘(救命救急センター長) … 手塚とおる 51歳。国立湊大学付属病院救命救急センター長。脳神経外科教授と兼任。典型的な国立大の教授職で、臨床実績よりも論文の数で今のポストについた。長いものには積極的にまかれていくタイプで、何かと最上院長にくっついてばかりいる。救命救急センターの新設に伴いセンター長を兼任することになったが、現場的な救命救急の心得はほとんどなく、何か問題が起きた時にしか医局に顔も出さない。一方脳神経外科教授としてのプライドは人一倍高く、脳死下臓器提供第一例の脳死判定には、自分が入ることに決めている。
◇ 最上透(第一外科教授兼病院長) … 段田安則 61歳。国立湊大学付属病院・第一外科教授兼病院長。専門は外科。医師としての腕も一流ながら、大学病院内での政治力は群を抜いている。学閥・閨閥・門閥などを巧みに利用し、邪魔者や裏切り者も、あえて配下に加える周到な策略家でもある。褒め言葉がうまく、人たらし。臨床より研究を重視する国立大の大学病院の特徴をうまく利用して、膨大な論文の数で病院長にのぼりつめた。時代の流れから、長年「救命部」しかなかった湊大に、「救命救急センター」を作ることになり、現場のまとめ役である医局長の立場に、前病院での実績も名高い小島楓をスカウトした。急ごしらえの職場で誰がやっても神経をすり減らす立場だとわかっているが、女性救命医として有名になりつつあった楓の広告塔としての価値もわかっていて、あえて外部から登用。しばらくは様子見だと思っていると同時に、楓が苦しむ姿を見るのを心の中では楽しんでもいる。
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