半沢直樹って凄いですねー。
ドラマの倍返しでも見てすっきりせんことには、この堅苦しい世の中渡っていけません。サラリーマンの活力のためにも、こういうドラマは大歓迎です。
現実に倍返しをした者が送られてくるところが私の部署でした。しかし、こいつらは知能は一切使わない武闘派だから干されるのも早かったというわけです。
そんな中、一人だけ毛色の変わった人が送り込まれてきました。
初日、挨拶するなり、
「もう止めます」と寂しいことを言うのです。
「どうしました?ここが嫌ですか?」
「・・・・・・・・・」何も言わないので要領を得ません。
「せっかく違うタイプの人が来てくれたから大歓迎なんです。せめて一週間でも一緒に仲間になってくれませんか?」
「でも、どのみち止めることになるから・・・」
なんか抱えてそう。
「ここは、それぞれに何かしら嫌な思いをして集まっているから、もしかしたらいい仲間に巡り合えるかもしれませんよ」
すると、ポツリポツリと話し始めたのですが、どうやら入社以来、ひどい苛めにあっていたそうなのです。
「それなのに、こんな輪をかけた札付きの部署に回されるということはクビにするつもりなのでしょう」
おとなしいフリして胸に刺さる言葉を遠慮なく語ってくれるじゃありませんか。反論もあるけど、本人の辛い思い出を聞いた以上、謝るしかありません。
頭を下げてから、
「でも思い過ごしですよ。今じゃ優良部署の一つだし」
間の悪いことに、ここでパンの取り合いでもめ事を始めるアホがいるんです。やっぱりな、という顔がさらに私の胸に深く深く刺さるのです。
「相当なスパルタでそうなったと聞きました。失敗したら壁に叩きつけられたり、無理やり相撲取らされたり・・・」
一部だけど思い当たることがあるだけに胸が痛い。人によっては休もうもんなら、ツルハシ持って迎えに行ったこともあった。
「おい!お前!!ほんだけ語れたら十分根性あるやんけ!」と、突然割って入ったのがモバゲーです。
「もう止めてええよ。けど、止める前に俺をしばけ!お前を苛めてた連中は、俺が前に苛めた。思い切り俺を殴って恨みを晴らせ!」
「そういうのが嫌なんですよ」
私もそういうことされたら困る。
「ええから殴れ!しょせん暴力なんて無力と知ってから止めてくれ。そうせなお前はずっと苛めにおびえ続けなあかんぞ。この部署で足跡残して止めてくれ」
後にゲームで中学生にペコペコしている男とは思えません。
「な!殴ってくれ」
躊躇している中、追い打ちをかけ続けています。
そして、らちがあかんと思ったか、さっさと逃げ出そうと思ったのか、いきなりゴツン!!!体がスローモーションのように倒れて行きます。
「アホやー、自爆しよった」と思わず下を向いて笑っていると、
「よし、グラーツさんも殴れ!思いっきりいけよ」
えっ!と顔を上げた瞬間、椅子から転げ落とされました。顎が痛い。よ~し次は俺の番やー!と言える空気でもないのが悔しい。
パンを巡ってちっぽけな闘争をしていた奴までもが、
「俺にも来い!」とわけの分からんことで盛り上がっています。
こんな男比べみたいなことが習慣化したら困るので、
「よし!殴られる痛みも知らなあかんぞ!」と近づいていくと、
「あんたは子供かー!!」と全員からのぶちかましで、壁に叩きつけられて、またまた痛い思いをすることに。
あろうことか、新人までもが調子に乗って目に涙をためて一緒に体当たりしてくるのです。
私をハミゴにして、みんな抱き合て楽しんでいる。
片や暴れん坊だった男、片や理路整然とした気の弱かった男、どちらも単純ですね。こんな漫画のような現場に出くわしたのは初めてでした。
とにかく、一方的に苛められたのは私で、あの時の無意味な私への暴力は忘れ得ません。私の頭の中では、Aクラスの悪人として認定しています。