若い後輩の女子が、人目を気にしながら近づいてきて、こそこそと話します。
水虫になったとか。
お風呂が好きで、休みのたびに湯に浸かりに行っているので、うつされたのだろうとのこと。
「せっかくやし、しばらく水虫とつきあえば?高貴な遊びやで」
「恥ずかしいじゃないですか!」と怒る。
「どこかの国の金持ちはわざと水虫になるらしいよ」
痒いところを掻いたら気持ちいい。
私も経験があるのですが、それが水虫ならなおのこと。
「掻いたら、たまらん気持ちいいでしょう?」
「それが、そうなんですよ」と笑う。
が、そのまま放っとく訳にもいきません。
私に薬を買いに行けということなのでしょう。
「絶対に内緒ですよ」
「まかしとけ!豆腐のように口は堅い」
「殺しますよ」
「はい」と言ったものの、久々のヒットネタが転がりこんできては、私もメールの一斉送信の準備は怠りない。
★グラーツ探偵のトップシークレット★
いつものタイトルから見出しまでつけて仕上げ、いざ!というときに、ちょっと待て!ぼく明日から休みやから楽しめんなぁと思いなおしました。
新たな発想が浮かんだのです。
また、呼び戻して、こそこそ会話は続くのです。
「風邪と一緒で、人にうつしたら治るって聞いたことあるよ」まったくの嘘です。
「へぇー、そんなもんなんですか」
「信憑性は薄いけど、みんな仲間やしね。痒いところを掻く気持ちよさを共有したらいいんじゃないかな」
「けど、私が放散したとバレたら、ひんしゅくじゃないですか」
「若い可愛い女の子が水虫ばら撒いたなんて、誰も思やせんよ」
「ふふふ、やっちゃいましょうか 幸せのおすそわけ」
さすがは我が後輩。こういうことには話が通じます。
さらに、コソコソ二人で計画を練ったのです。
ぐふふ、お主も善よのぉ。うひょひょ。。。。
私が休日の間、みんなが水虫になる。
それだけでも面白いのですが、休み明け、トップシークレット炸裂。
「こいつの仕業です」とネタばらし。気持ちいいでしょうなぁ。
空想が広がり顔も緩むというもんです。
「グラーツさんの命令とあっては、私も嫌とは言えませんね」
空想は消え、緩んだ顔が凍りつく。
「ちょっと待て!手柄は君一人のもんやで。だいたい俺は命令するようなキャラじゃないやろ」
「いやぁ、誰も逆らえませんよ」
「あほんだら!誰も言う事きかんやんか」
必死の説得が続いたのでした。
こいつ、はじめからシナリオ書いて来たな!
なんとか、かわいい後輩が悪事に手を染めるのを未然に防いで、連休を迎えることができました。
明日、水虫の薬を買って行ってあげようと思います。