信仰
アララギ村は高い山に囲まれた山里である。それ故、神道、仏教のほかに山岳信仰も古くからあり、山伏修行もする村人も多い。薬のノートで書き忘れたが、陀羅尼助も今でも普通に服用されている。
また、温泉も湧出しており、湯もその効能を神様からの贈り物と認識され、信仰のの対象になっている。似たような事例は湯殿山でもみられるが、アララギ村でも湯船には神棚が置かれ、身を清めてから湯に入り、湯につかっている間中手を合わせて神棚に向かって祈りをささげている。
温泉で体を洗い汚れや垢を落とすことは、湯を汚し神を冒涜するものとして固く戒められており、信仰心の厚い村人だけが湯に入ることを許されている。
なお、アララギ村では一般に家風呂はほとんどなく、共同風呂。もらい風呂が普通である。夏場は川で身体を洗い、風呂を沸かすのは水の冷たい秋冬春先に限られている。入浴は多いもので2週間に1度、平均すると1か月に1度程度である。アララギ婆様はもう半年は風呂に入っていないらしいが、それで命を落とすわけではなし、と平気な風情である。入浴しても石鹸は使わず、子供たちはまとめて湯船に入れられ、お互いの体をぶつけたりこすり合わせることによって汚れを落としている。さながら芋の子を洗うみたいな風情であり、アララギ村には芋姉ちゃんが多いのも、うなづける。
今一つ、この村に特異なものは、猫神社であろう。稲荷のように狐を祀った神社は全国各地にあるが、猫を祀った神社はアララギ村を除くと例がない。
言い伝えによると、昔村人がクマに襲われたとき、凶暴な猫がクマに向かってヤンノカコラといってにらめつけたら、クマが恐れをなして逃げて行ったことに由来するらしい。それ以来凶暴な猫は村人たちに崇められるようになり、好物のアイスの代わりにつららがアイスキャンディとして供えられるようになって、今日にいたっている、という。