カキ
カキノキ(柿の木、学名:Diospyros kaki Thunb.)は、カキノキ科 (Ebenaceae) カキノキ属[1] の1種の落葉樹である。東アジア原産の同地域固有種。日本や韓国、中国に多くの在来品種があり、特に中国・長江流域に自生している。
熟した果実(柿)は食用とされ、日本では果樹として、北海道以外で広く栽培されている。果実はビタミン類や食物繊維を多く含むことから、現代では東アジア以外の地域でも栽培・消費されている。ヨーロッパ産(2018年時点で54万トン)ではスペインが9割を占め、中国に次ぐ世界第2位の生産国である。
幹は家具材として用いられる。葉は茶の代わり(茶外茶)として加工され飲まれることがある。果実はタンニンを多く含み、柿渋は防腐剤として用いられる。現在では世界中の温暖な地域(渋柿は寒冷地)で栽培されている。
学術上の植物名はカキノキ、果実はカキ、あるいは一般的に両方を含めてカキ(柿)と呼んでいる野生状のカキノキは、「ヤマガキ」とも呼ばれている。
和名カキノキの語源は、赤木(あかき)、暁(あかつき)の略語説、あるいは「輝き」の転訛説など諸説あるが、正確にははっきりしない。原産である中国の植物名(漢名)は柿(し)である。学名は、ディオスピロス・カキ(Diospyros kaki)といい、日本から1789年にヨーロッパへ、1870年に北アメリカへ伝わったことから、学名にも和名の発音と同じ kaki の名が使われている。果実は日本で食用として親しまれた果物で、英語でもカキ・フルーツ(kaki fruit)、ドイツ語やフランス語など英語圏外の大抵の地域でもカキ(kaki)の名で通っている。
英語で柿を表すパーシモン(persimmon)の語源は、アメリカ合衆国東部の先住民(インディアン)の言語であるポウハタン語で「干し果物」を意味する名詞「ペッサミン」(putchamin, pasiminan, pessamin) であり、先住民がアメリカガキ Diospyros virginiana の実を干して保存食としていたことに基づく。
近年、欧米ではイスラエル産の柿である「シャロン・フルーツ」(sharon fruit) が流通しており、この名で呼ばれることも多い。これはシャロン平野に因む名である。
落葉の小高木で、高さは4 - 10メートルになる。一年目の若枝には毛があり、基部には前年の芽鱗が残る。樹皮は灰褐色で、網目状に裂ける。枝は人の手が加えられないまま放って置かれると、自重で折れてしまうこともあり、折れやすい木として認知されている。葉は互生し、長さ8 - 15センチメートルの楕円形から卵形をしていて先が尖り、表面にややつやがある。葉縁に鋸歯はない。葉柄は長さ1センチメートル前後で、太くて短い。
花期は初夏(5 - 6月)。本年生枝の基部近くの葉腋に花がつく。花弁は白色から淡黄色で4枚ある。雌雄同株であり、雌雄雑居性で雌花は点々と離れて1か所に1つ黄白色のものが咲き、柱頭が4つに分かれた雌しべがあり、周辺には痕跡的な雄蕊がある。雄花はたくさん集まって付き、雌花よりも小さい。萼は4裂し、花冠は鐘形をしている。日本では5月の終わり頃から6月にかけてに白黄色の地味な花をつける。
果期は秋から初冬にかけて(9 - 12月)。果実は柿(かき)と呼ばれ、品種によって大小様々な形があり、秋に橙色に熟す。萼(がく)は「ヘタ」とよばれ、後まで残っている。ヤマガキは枝、葉に毛が多く、果実は小さい。柿の果実は、年によりなり方の差が大きい。果樹を叩いたり、傷つけたりすると、花芽形進されて実がなることが知られ、樹木の採種園でも樹皮を円周状に傷つける環状剥皮が行われる。果実は、タヌキやサル、カラスなどにも食べられて、種子が人里近い山林に運ばれて芽を出すこともある。
冬芽は互生し、丸みがある三角形で短毛がある。枝の先端に仮頂芽、その下には側芽がつき、芽鱗は4 - 5枚ある。葉痕は仮頂芽の背後と、側芽のすぐ下にあり、半円形で維管束痕は1個ある。
柿は弥生時代以降に桃や梅、杏子などとともに栽培種が大陸から伝来したものと考えられている。鎌倉時代の考古遺跡からは立木の検出事例があり、この頃には甘柿が作られ、果実収穫を目的とした植栽が行われていたと考えられている。
カキの果肉にはタンニン細胞があり渋味の原因となるタンニンを含有する。カキタンニンは緑茶タンニンとは異なり分子量が大きく、特にたんぱく結合力が強く唾液たんぱくと結合して不溶物を生成して渋味になると考えられている。
品種によりタンニン細胞の数や形状は異なる。完全甘柿のように渋がもともと少ない品種もある。渋柿には1~2%のカキタンニンを含む。果実中のカキタンニンは、水に溶ける可溶性の間は味覚が渋く感じ、果実が熟して水に溶けない不溶性に変わる褐斑(かっぱん:いわゆるゴマ)となると、渋味を感じなくなる。具体的には成熟によりアセトアルデヒドが増えて水溶性のタンニンの間に架橋が起こりタンニンが不溶性となることで渋みを感じなくなる。熟柿になると実は軟化するが、熟柿になる前の軟化していない状態でも果実中にアセトアルデヒドを生成させることで渋を抜くことができる。
食べ方は多様で、一般に生食するが、完熟して崩れんばかりのものを賞味する場合があったり、渋柿は干し柿にしたり、柿羊羹などの菓子材料などに加工したりする。中国の北京では、冬にシャーベット状になったものを食べるという食べ方もある。
果実に含まれる主な有効成分は、グルコース・マンニットなどの糖質10%、ペクチン、色素のカロチノイド、カキタンニン(柿渋)などがある。カキタンニンはビタミンPによく似た分子構造で、毛細血管の透過性を高めて、高血圧を防ぐ効果があるといわれている。