チューリップ
(英語: tulip [ˈt(j)uːlɪp])はユリ科チューリップ属の植物。球根が出来、形態は有皮鱗茎。和名は鬱金香(うこんこう、うっこんこう)、中近東ではラーレ(トルコ語: lale、ペルシア語:لاله など)と呼ばれる。アナトリア、イランからパミール高原、ヒンドゥークシュ山脈、カザフスタンのステップ地帯が原産。
本項では日本では一般に栽培されているTulipa gesneriana(植物学者コンラート・ゲスナーに因む)およびそれ以外の原種・園芸種(Tulipa 属全般)について触れる。
チューリップには後述のチューリップ相場に代表されるように多様な園芸品種が存在する。外観は、花弁の先端が丸いもの・尖ったもの・フリル状のものもある。咲き方は一重から八重で、一つの球根から複数の花がつくもの、すぼまった状態で開花するものや花弁が外側へ反り返り全開して開花するものなど。花色も青以外の赤・黄・オレンジ・白・緑・紫などの単色や複数の色のものなど、数百品種のチューリップが存在する。青バラと同様に多くの育種家によって青いチューリップの開発が進められているが、花弁全体が青い品種は発表されていない。チューリップの花を上から覗くと、花弁の根元に青い部分が存在する。その部分には青い色素が見られ、その青い部分を増やすことで青いチューリップを作る研究がされている。
大きな球根を採取する場合は開花から約2日後に花部を切断する。また、深く植えつけると分球が少なくなるがその分、肥大は良くなる(植えつけた年は変化がなく、その次の年に影響する)。繁殖は主に分球で、実生(タネ)からは開花までに5年以上かかる。
他のユリ科の植物と同様、両性花であり、雌雄異熟によって自家受粉を防いでいる。
実生は品種改良の際に行われる。人気のある花だけに花形・花色、草姿、葉の模様、ブルームの有無、香り、早晩性、耐暑性・耐湿性、多花性、繁殖力、切花では切花寿命や無花粉化、花茎の硬さなど改良されるべき性質が多く、特に日本の高温多湿に強い品種が望まれる。ただし、野生種をはじめ交配に使える素材も多いため、時間は掛かるが品種改良は比較的容易である。
開花前に裁縫に用いる針等を用いてチューリップの花の根元部分を貫通させ傷つけるとエチレンが発生し、開花期間を長引かせることができ、開花後に同様のことを行うと開花期間が短縮することがチューリップのみで確認されている。
デリバティブ取引の一つである商品取引は、17世紀初頭にオランダで行われたチューリップ取引が起源であるといわれている。当初は、植物愛好家間の取引であったが、投機的な資金が流入し、珍しい品種のチューリップの球根が高値で取引された。これを、チューリップ・マニアまたはチューリップ・バブルと呼ぶことがある。ハーレム、アムステルダム等での常設現物市場や、相対取引での先渡取引等、一般庶民を巻き込んで盛んに取引が行われたが、1637年の球根価格の暴落により、チューリップ・マニアまたはチューリップ・バブルは終焉した。