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深刻な病気の兆候として、傾眠傾向が見られることがあります。傾眠傾向の主な原因についてお伝えします。
●認知症
認知症の人に見られる症状の一つに、昼夜逆転による夜の睡眠量不足がありますが、それが日中の傾眠を引き起こす理由です。
また、認知症の初期症状である「無気力状態」から、傾眠状態に陥ることもあります。
●慢性硬膜下血腫
「慢性硬膜下血腫」とは脳疾患の一つで、頭を打ったときに脳と硬膜の間に血腫ができ、脳を圧迫する病気です。
血腫が大きくなると傾眠傾向が見られるようになり、頭を打ってから1~2カ月程度経過すると、頭痛や片麻痺による歩行障害といった症状などが現れます。
基本的に外科手術が必要になるため、早めに気付くことが重要です。
●過眠症
傾眠傾向の原因というよりは、傾眠傾向とよく似た症状が出る睡眠障害に、「過眠症」があります。
過眠症の人は、夜しっかりと睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強烈な睡魔に襲われ、眠り込んでしまいます。
発作的に強い眠気におそわれ、前触れもなく突然入眠する「ナルコレプシー」と呼ばれる病気も、過眠症の一つです。
●内科的疾患
肝臓や腎臓などの代謝に関わる臓器に異常が出たり、病原菌が原因で高熱が出て、1日中ボーっとした状態になったりすることがあります。傾眠傾向だけでなく、今いる場所や時間がわからなくなる場合もありますが、内臓の活動が正常に戻ったり、熱が下がったりすることで症状は収まります。
●脱水
噛む力や飲み込む力が衰えて食事を満足にとれないと、脱水症状や栄養不足につながります。また、高齢者は体に必要な水分を確保しておく機能が低下しているため、意識的に水分をとらないと脱水症状に陥る可能性があります。
脱水状態は、意識レベルを低下させ傾眠の原因になるだけでなく、ひどいときは幻覚症状(幻視や幻聴)まで引き起こすことがあります。
●薬の副作用
脳の細胞の興奮を抑える働きを持つ「抗てんかん薬」には、副作用として傾眠傾向を引き起こしやすい性質があります。また、認知症の薬の中にも、副作用で軽い傾眠傾向が出るものもあります。このように、薬によっては傾眠傾向を引き起こしやすいものがあるため、使用時は医師や薬剤師に副作用について確認しておきましょう。
例えば、花粉症の薬にも傾眠傾向を引き起こしやすい「抗ヒスタミン薬」が含まれています。花粉症の薬は、医師に処方してもらわなくてもドラッグストアで手に入る身近な市販薬が多いので、薬剤師に相談して眠くなる成分がなるべく少ない物を選ぶようにしましょう。
傾眠傾向の対処法
日中眠っていて食事をとらずに栄養不足に陥ったり、深刻な病気が疑われたりなど、傾眠傾向は大きなリスクをはらんでいます。正しい対処法を知ることで、傾眠傾向が見られる人に適切に対応しましょう。
●話しかける・散歩などに連れ出す
まずは、すぐにできる対処法を試してみましょう。外部からの弱い刺激でも気が付くようであれば、積極的に話しかけ、会話の機会を増やして眠る隙を与えないようにすることが効果的です。
ただ話すだけにとどめず、外に連れ出して散歩をするのも良いでしょう。適度な運動で身体能力の向上を期待できるだけでなく、日中活発に動き回ることで、夜ぐっすり眠れるようになります。
●薬の量を調整する
認知症などの薬が原因の場合は、医師に相談して服薬量を調整してもらう必要があります。
介護している家族も、薬に含まれている成分や副作用について事前に把握しておき、日頃から注意して行動を観察しましょう。そうすることで、医師に話すときも具体的な相談をできるようになります。
●短時間の昼寝をさせる
眠気がひどい場合は、時間を決めて昼寝をさせるのも良いでしょう。30分ほどの昼寝が効果的で、日中の眠気を取り、夜の睡眠にもそれほど影響を与えないとされています。
●医師に相談する
傾眠傾向の原因として病気が考えられるようであれば、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。中には手術が必要な病気もあるため、早めの対応が重要です。
また、たとえ病気が原因ではなかったとしても、傾眠によって陥る脱水症状や栄養不足が、別の病気を招く可能性もあります。少しでも気になったら、すぐに医師の判断を求めましょう。
傾眠傾向との正しい付き合い方
傾眠傾向は、比較的軽度の意識障害であるため、周囲のサポートで改善できることもたくさんあります。症状がひどい場合は医師に見てもらう必要がありますが、まず日中の過ごし方を見直してみることが大切です。
放っておくと重症化する可能性もあるため、「大したことはない」と考えるのではなく、医師と連携しながら適切に対応していきましょう。
傾眠傾向に陥っている本人には対応できないことも多いので、周囲の人や家族がいち早く気付き、患者にとってより良い生活環境を整えることが重要です。