https://www.holos.jp/media/nursing-home-cost-cannot-pay2.php
自分や両親が介護施設を利用するようになった時のお金は用意できていますか?
介護施設によって必要な費用は異なるものの、入居一時金だけで数百万円~数千万円が必要になるケースもあります。
もし「費用が払えない…」となってしまった時、どうすれば良いのでしょうか?
若いうちから取り組める資金対策も含めて解説します。
介護のお金はどこから出てくる?
介護の費用は一体どのくらい必要になるか、ご存知ですか?
家庭によっては「子ども世代が親の面倒を見る」ということで、話し合いが終わっていることもあるかもしれませんが、果たして問題ないものでしょうか?
基本は親のお金
生命保険文化センターが公表している平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」によれば、毎月の介護にかかる費用の平均は78,000円でした。
あくまで平均であり、安心はできません。事実、15.8%もの人が15万円以上の費用を支払っています。
参考:平成30年度 生命保険に関する全国実態調査
月15万円を1年払い居続けると、年間では180万円にもなります。
子育て世代である30~40代が支払うことは難しいと言わざるを得ません。
自分たちの介護費用の準備、住宅ローンの支払いなども控えており、いくら普段から貯金できているといっても気軽に払える金額ではありません。
親を助けることは大切ですが、あまりに負担が大きいと日常生活を送れなくなります。
介護費用は子どもではなく、あくまで親のお金で払うことを前提にしましょう。
介護保険サービスで自己負担は最小1割に
介護保険は、必要な人が使えるように保険料と税金で運営されています。
自己負担は以前には全員が1割負担でしたが、現在では所得に応じて1~3割負担です。
今まで2割負担だった人うち、単身者の場合は「年金収入が340万円以上(年金収入のみ単身者の場合は344万円)の人が現在では3割負担に変わっています。
介護される全員が1割負担ということではありません。
自分の自己負担限度額は、要支援・要介護の認定者に交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
介護施設の支払いを滞納してしまった際の流れ
身元引受人に連絡が行く
払えないからといって、即時退去になることはありません。
段階を踏んで何度か請求され、それでも支払えないと退去になります。退去に至るまでは、1~2ヶ月の猶予が与えられるのが一般的です。
本人に支払える能力がない場合は、身元引受人(連逮保証人)に連絡が入ることも覚えておきましょう。
連帯保証人に連絡しても払われない場合は、あらためて強制退去を求められます。
まずは施設に相談する
「お金がなくて介護施設費用を払えないかも…」
このように感じたら、すぐに入居している施設の生活相談員あるいはケアマネージャーに相談しましょう。
周辺にある低価格の施設や、仲介業者である「老人ホーム紹介センター」の担当者を紹介してくれることがあります。
インターネットで情報を調べてみる
ケアマネージャーに相談しつつ、入居者の家族がインターネットを使って新しい施設を探してみることも大切です。
「介護施設 入居金0円 〇〇(地域名)」などと検索すれば、目当ての施設が見つかるかもしれません。
子ども世代がお金を払う必要はありませんが、このような「労力」の面で手伝っていきましょう。
介護施設費用を払えない時はどうする?
料金が安い施設に移る
入居している介護施設に未償却の入居一時金が残っている場合、退去することでお金が返金されます。
その費用を転居先の老人ホームの入居一時金の足しにすることで、新しく持ち出すお金を最小限にして入居が可能です。
転居先には「入居一時金がかからない」など、比較的安価な有料老人ホームを選びましょう。
サービス付き高齢者向け住宅なども、初期費用がそれほどかからずに利用できる可能性があります。
例として、各施設にかかる費用相場を紹介します。
区分 |
施設の種類 |
入居一時金の相場 |
月額料金の相場 |
民間 |
介護付き有料老人ホーム |
0~数億円 |
15~35万円 |
住宅型有料老人ホーム |
0~数千万円 |
10~30万円 |
グループホーム |
0~数百万円 |
15~十数万円 |
公的 |
ケアハウス |
数十~数百万円 |
数万円~30万円 |
介護老人保健施設 |
0円 |
10~20万円 |
特別養護老人ホーム |
0円 |
6~15万円 |
インターネット上で検索した相場のため、実際には施設ごとに大きく異なります。
入居者の状態でどの施設を使うかは異なりますが、可能であれば公的施設の方が費用を安く抑えられる可能性が高いです。
特に特別養護老人ホームは「初期費用が必要ない」「月額も安い」とメリットが大きい施設です。
要介護3以上の人しか入居できませんが、該当するのであれば検討する価値があるでしょう。
地方の施設
一般的な不動産と同じく、駅から徒歩数分といった好立地の介護施設は費用が高い傾向があります。
逆に言えばわざと不便な立地にある施設を選ぶことで、費用を安く抑えられる可能性があるということです。
駅から遠い施設はもちろん、主要都市から離れた地方都市に入居することも1つの選択肢です。実際に介護施設に入居するための「介護移住」は珍しいことではありません。
ただし、車を使って入居者に会いに行く必要があります。
費用の安さとアクセス、両方を考えて許容できる範囲の施設を考えましょう。
古めの施設
こちらも一般的な不動産と同じ理由ですが、新しい介護施設ほど「賃料」は高くなります。
古くなるほど費用は安くなる傾向があるため、予算重視で介護施設を選ぶなら築年数をチェックして古い介護施設を選びましょう。
生活保護を受ける
お金がなく、在宅介護も難しいのであれば、本人の状態にもよりますが生活保護を申請することも考えます。
保護受給者でも入居できる施設を探すことになるでしょう。
生活保護受給者を受け入れてくれる施設は多くはないため、各介護施設への相談が必要です。
本人の状態で受け入れできる施設であることが前提のため、見つからないことは事前に覚悟しておきましょう。
生活保護を受けられれば、介護費用は生活保護の中の「介護扶助」の対象になります。
要介護・要支援の人はケアプランを生活保護の担当者に提出することで、介護サービスを受けられます。
どうしても受け入れてくれる施設が見つからない場合は、在宅介護の費用について扶助を受けることも検討する必要があります。
介護保険料の減免を受ける
40歳になると納付義務が発生するのが「介護保険料」です。
免除の制度は存在しませんが、特別な事由なら「減免制度」を受けることはできます。
減免の対象になるには、以下の条件をすべて満たしていることが必要です。
- 保険料徴収の所得段階が第1段階(生活保護受給者を除く)、第2段階または第3段階であること。
- 世帯員の前年の収入合計額がひとり世帯の場合は150万円(世帯構成員がひとり増えるごとに50万円を加えた額)以下であること。
- 世帯員の預貯金の合計額がひとり世帯の場合は350万円(世帯構成員がひとり増えるごとに100万円を加えた額)以下であること。
- 世帯員以外の者の所得税または市町村民税に係る扶養親族ではないこと。
- 世帯員以外の者の医療保険において被扶養者ではないこと。
- 自己の居住用以外に土地または家屋を所有していないこと。
- 自己の居住用の土地が200平方メートル以下であること。
- 介護保険料を滞納していないこと。
引用元:小平市|生活困難者の介護保険料の減免
介護保険料減免申請書などの必要書類を、市区町村の担当者に提出して申請が始まります。詳しくは市町村の担当者に確認しましょう。
家族でできることは老人ホームに依頼しない
有料老人ホームに入居する費用がない場合、まずは家族で分担できないかを考えます。
1人では大変な介護でも、複数人であたれば1人ごとの負担は軽減されて長きにわたって介護できるかもしれません。
ヘルパーさんの支援や訪問看護・訪問リハビリなど、要介護度に応じてサービスを受けることも可能です。
リバースモーゲージローンを利用
高齢者が自宅を所有している場合、家を担保にお金を借りるリバースモーゲージローンを利用する手もあります。
お金を借りている期間に元金の返済は不要で、借りたお金を介護施設への入居一時金などに充てることが可能です。
借りたお金は本人が亡くなったあとに銀行が住宅を売却する形で返済します。
リバースモーゲージローンにはデメリットも
生きているうちは元金の返済不要でお金を借りられるリバースモーゲージは、「生きているうちにお金を使える」「愛着のある家を生前は手放さずにお金を借りられる」といったメリットがあえいます。
一方、デメリットがあることも忘れてはいけません。
住宅は亡くなったあとに銀行が売却してしまうため、子どもが自宅に住むことはできなくなります。
子供たちが将来住む気が本当にないのか、十分に話し合いが必要です。
次に気を付けるのは金利リスクです。
リバースモーゲージは不動産を担保にした借金であり、元金は返済不要でも毎月利息が発生します。
利息は金利によって上がることがあり、契約が終わるまでは払い続ける必要があります。もし返済途中に金利が上昇すれば利息の支払金額が増えてしまいます。
想定より長生きした場合も問題があります。
長生きは本来であれば喜ばしいことですが、リバースモーゲージローンに関してはリスクの1つです。
清算は基本的に契約者の死亡後ですが、長期の返済リスクを抑えるために期限付きの条件で提供している場合もあるためです。
65歳から90歳までの25年で契約したケースで、もし90歳過ぎまで元気に存命した場合はどうでしょうか。
契約者が一括返済できなければ、90歳にして家を失ってしまう危険があります。
今のうちから親と話し合うべきポイント
介護のための貯金はあるのか
親に貯金の金額を聞くのは、親子の会話とはいえ失礼と感じる人もいます。
しかし、先立つものがないと介護施設は利用できません。入居する本人のお金から捻出することを考えましょう。
貯金額をずばり聞いても教えてくれない場合、「将来の介護について今から準備を進めたい」といって会話のキッカケを作るのも1つの方法です。
貯金額のうち、月に必要な生活費を入居までの年月分は差し引き、残った金額で入居一時金を払えるのかを考えてみましょう。
口座の暗証番号や印鑑の場所
貯金額が分かったとしても、通帳や印鑑がないと入居手続きは進められません。
遠方の介護施設に入居したら本人が探すことは難しくなります。本人が自宅にいるうちに、通帳や印鑑、身分証明書などの重要書類の保管場所を確認しておくほうが良いでしょう。
若いうちから民間の保険への加入を検討する
介護保険
親御さんの介護で苦労した経験がある30~40代の人は、自分が老後を迎えた時は大丈夫でしょうか?
自身の老後の介護費用を用意できるか不安な人は、民間の保険会社が提供している介護保険への加入を検討しましょう.
医療保険や生命保険に加入している人は多いですが、民間の介護保険に加入している人は多くないはずです。
公的介護保険だけで負担は最小で1割になるため、民間の介護保険が必要になる人ばかりではありません。
ただ、公的な介護保険でカバーできない部分は自己負担です。
民間介護保険なら、公的ほじぇんの対象外の事案でも保険金を受け取れる可能性があります。
現金を受け取る方法(一括・分割・併用)を選択でき、希望するライフスタイルに応じて給付を受けられるのもメリットです。
個人年金保険
所定の年齢まで保険料を納付した場合、一定の金額に達すると年金が支給される貯蓄型の保険です。
- 被保険者の生死に関係なく一定期間受け取れる「確定年金」
- 被保険者が生きている限り受け取れる「終身年金」
- 被保険者が生きている一定期間に受け取れる「有期年金」
そのほか、日本円ではなく外貨建てで運用する個人年金保険や、運用次第で年金額が変動する変額個人年金などの種類もあります。
保険料払込期間中に被保険者が死亡した場合には、遺族が死亡給付金を受け取ることも可能です。
年金額に不安がある場合、上乗せとして検討しましょう。
介護施設の費用が払えない時の対策 まとめ
介護費用は原則として子ども世代ではなく、両親の預貯金から捻出するのが原則です。しかし、貯金が少ない場合は介護施設の費用を払えないことも考えられます。
その時はまず介護施設の担当者に相談し、今後の身の振り方を考えましょう。最悪の場合は「生活保護を受けながら入居できる施設を探す」「自宅での介護を視野に入れる」などを検討する必要もあります。
まだ老後突入まで時間がある世代なら、子ども世代に頼らなくても良いように民間介護保険などへの加入も検討していきましょう。