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深刻な問題となっている地球温暖化を抑制するため「環境にやさしい自動車」としてEVが注目を集めています。日本はEV普及に出遅れたと批判されることもありましたが、自動車業界では世界的なシェアを誇る日本企業が、なぜ早期にEV化を推進しなかったのでしょうか?
EVを取り巻くさまざまな事情とともに、EVのメリット・デメリットや国産・外国産別おすすめEVの車種、選び方などを紹介します。EVの魅力と現状を探っていきましょう。
電気自動車(EV)の仕組み
それではEVはどのような仕組みになっているのでしょうか?
EVの重要なシステムとして、
- 充電/給電ポート
- リアモーターとパワーコントロールユニット(PCU)
- 床下バッテリー
があります。電気で動くのでガソリン車のように給油口ではなく充電・給電ポート、エンジンではなくモーター、そして床下に大きなバッテリーを搭載しています。
EVは必要に応じて充電する必要があります。
充電方法は、
などが挙げられます。EVを購入するなら、「充電スポットの使い方」や「充電スポットのある場所」を把握しておきましょう!
充電カードを作る
充電スポットを利用するには、「充電カード」を作っておかないとスムーズに充電できない上、料金も割高になってしまいます。充電カードは大きく分けて
- 車種にかかわらず作れるカード
- 各メーカーの発行するオーナー限定カード
があります。オーナー限定のカードはそのメーカーのディーラーなど特定の充電スポットで優遇が受けられる場合もあります。
急速充電と普通充電がある
EV充電器には
の2種類があります。普通充電器は交流電圧を100V〜200Vでゆっくりと充電します。時間はかかりますが、簡易な機器でも充電することができ、充電器の導入コストを抑えることができます!
急速充電器は、交流電圧を直流電圧に変換して大きな電力を短時間で充電できます。普通充電器の10倍の速さで充電することができる急速充電器もあり、より「早く、多く」充電できる急速充電器の開発が活発に進められています。
急速充電器で注意が必要なのが、新しいタイプの急速充電器に古いモデルのEVが対応していない場合があることです。特に外国産のEVは「新しい急速充電器へのアップデートが遅い」というユーザーの声が聞かれます。
【空の状態からフル充電に必要な時間の例】
※16A…カスタマイズで充電電力を8Aに変更し穏やかに充電することもできます。
※約20分…急速充電の場合、バッテリーなどの機器への負担をかけすぎないために80%までで充電が止まるようになっています。
家で充電する場合
家でも充電機器を用意すれば充電することができます。マンションなど集合住宅の駐車場では現状、EVの充電機器が使えない場合もあるので注意しましょう!
普通充電器であれば充電に時間はかかりますが、比較的低コストでも導入が可能です。家庭用EV充電器も次々新しいモデルが発売されています。*1)
【家庭用EV充電設備の例】
EVの仕組みが大まかにわかったところで、次はEVのメリットを確認していきましょう。
電気自動車(EV)のメリット
「EV=環境にやさしい」という理由で世界的に導入が推進されていますが、その他の面でもEVにはガソリン車より優れている面があります。なぜ環境にやさしいのかも含め、EVのメリットをいくつか紹介します。
メリット①走行にCO2を排出しない
EVの大きなメリットとして、走行時にCO2を排出しないという特徴があります。しかし、全くCO2を排出しないわけではありません。
なぜなら、
- 車両製造
- 組立・廃棄・リサイクル
- バッテリー製造
- 発電(発電方法による)
これらの段階ではCO2を排出するからです。とはいえ、それらを含めてもガソリン車に比べてCO2の排出は少なくなります。そして、CO2の少ない発電方法ならCO2の排出量をさらに減らすことができます。
メリット②長距離を走るほど燃料費が割安になる
最近は、電力価格もガソリン価格もともに高くなる傾向にあります。しかし、車両のエネルギーとして走行距離に換算すると、電力はガソリンよりも安くつきます。EVの方がガソリン車より
- 年間5,000km走行する場合…22,500円
- 年間10,000km走行する場合…45,000円
節約できると環境省は試算しています。
メリット③エンジン音がなく静か・振動も少ない
ガソリン車がエンジンで動くのに対し、EVはモーターで動きます。つまり、エンジン特有の「ブルルン」といった音や振動はなく、「ウィーン」というモーターが回る微かな音のみで振動はほとんどありません。
EVやハイブリッド車の電力走行時は、とても静かなので歩行者などが気が付きにくい場合もあるほどです。また、エンジンのように暖房に排熱利用ができません。そのため、暖房にも冷房にも相応の電力を消費します。
メリット④非常用電源として使える
EVのバッテリーはどんどん高性能になっており、大容量の蓄電池として災害時や停電時に役に立ちます。EVから家庭に電力を供給するにはV2H※という設備が必要です。
この設備があれば、停電しても2〜4日ほどの家庭の電力をEVから賄うことができると言われています。
メリット⑦EV・FCVは国立公園で有料駐車場が無料
環境省は2021年4月1日から、10の国立公園と2つの国民公園の有料駐車場で、EV・FCVの駐車料金を無料化するキャンペーンを行なっています。国立公園の駐車場には順次充電スポットの設置も進められる予定です。*2)
【EV駐車料金無料化キャンペーン予定施設一覧】
EVのメリットとなる特徴や優遇措置の多さがわかったところで、次はデメリットについて考えていきましょう。
電気自動車(EV)のデメリット|日本の普及が遅れている理由と課題
世界でEVの導入が推進される中、日本ではまだ自動車全体の0.8%ほどしか導入は進んでいません。筆者は比較的都市部(福岡)に住んでいるので、時々EVを見かけるようになりましたが、未だに多いとは感じません。
そこにはEV普及に当たって未解決の課題や、現状のEVの性能に起因するデメリットが多いという理由があります。これらは将来的に解決される可能性が高いと言えますが、現状のデメリットを確認しておきましょう。
デメリット①充電に時間がかかる
EVの充電には現状、ガソリン車が給油に要する時間よりも長い時間がかかります。日々の走行距離が短い場合は毎日充電する必要もありません。必要な時に夜間電力を利用して充電するだけで過ごせるでしょう。しかし、レジャーなどで遠出をする場合は、距離によっては途中で充電する必要があります。
1回の急速充電が30分ほどなので、充電している間はそこで休憩するなどしながら待つことになります。
デメリット②バッテリー残量にヒヤヒヤ?!連続長距離走行は苦手
現在発売されているEVは、初期のモデルに比べて走行距離は飛躍的にのびています。フル充電で、
- 200kmほどの近距離用車種
- 400km~500kmほど走れるガソリン車と変わらない走行距離を実現している車種
の2つのタイプが現在の主流です。
しかし、道路の条件や気象条件により、走行距離は大きく変わると言われています。暑さ・寒さによるエアコンの利用やオーディオなどの機器、上り坂など、通常の走行に加えて電力を消費する要素があるからです。
慣れるまでは「思ったより早く充電がなくなった」と感じることが多いかもしれません。「次の充電スポットまでの距離と充電の残量にヒヤヒヤしながら走るのがストレス」というEVユーザーの声も出ています。
デメリット③充電設備がまだ少ない
日本の充電スポットは都市部に集中しているうえに、ひとつの場所で複数台同時に利用できる場所はまだ少ないのが現状です。EVを発売している自動車メーカーのディーラーは、他社製のEVにも充電スポットを解放していますが、「その会社の車ではないのに充電しに行くのは気が引ける」という(日本人ならではの)声も多数上がっています。
これらの問題はインフラの整備が進んだり、社会的な意識が(どこで充電しても気にならないと)変わったりすることによって将来的に解決されますが、現状はデメリットのひとつであることは確かです。
年末年始にディーラーの充電スポットが閉まることもあり(日産は全て解放されている)、まだ社会がEVを受け入れていく途上にあることが感じられます。
デメリット④高速道路などで充電の列(一台30分)
充電には時間がかかるうえに、充電スポットが少ないというデメリットにより、高速道路などで充電の列に悩まされることがあります。急速充電で1台につき30分ほどかかるので、前に3台並んでいたら、自分の番が回ってくるのはだいたい1時間半後…となります。
現在、高速道路の全てのパーキングエリアに充電スポットが設置されているわけではありません。曜日や時期によっては充電スポットに列ができてしまうこともあり、この順番待ちのせいで目的地への到着時間が大幅に遅くなってしまう可能性があります。
デメリット⑤バッテリーの寿命
EVに欠かせないバッテリーには寿命があります。EVはモーターなどバッテリー以外の部分に深刻な問題が発生することはほとんどありません。
しかし、ガソリン車やHVが平均的に走行距離10万㎞・10年が寿命と言われているのに対し、EVのバッテリー保証期間は8年ほどです。保証期間が過ぎても乗り続けることもできますが、バッテリーは使用回数によって劣化していき、
- 走行距離が短くなる
- 同じ時間でも充電される量が少なくなる
などが徐々に起こります。バッテリー交換も可能ですが、数十万円の費用がかかります。
多くの場合、保証期間を過ぎたころからバッテリーの劣化を感じるようになると言われています。
デメリット⑥人力で押せない?!
EVは充電がなくなってしまうと、駆動輪(モーターと連結している車輪)がロックされます。つまり、ガソリン車のようにギアをニュートラルに入れて人の力で移動させることができません。
現在では自動車を人が押して移動させる場面はほとんど見かけませんが、もし充電が切れてしまったらロードサービスに来てもらわなければEVを動かす手段はないと考えていいでしょう。携帯電話の電波が届かない所へ行くときは、絶対に充電切れにならないように対策する必要があります。
課題①リサイクルの問題
現在、EVに使用されているのはリチウムイオンバッテリーです。リチウムイオンバッテリーはリサイクルが推進されています。しかし、現段階ではリサイクルにかかる総費用が売却額より高くつきます。
将来的にリチウムイオンバッテリーの回収量が多くなれば、技術開発にともないリサイクルしても採算がとれるようになる見込みです。現在はリサイクルにお金がかかっても、
- 環境のため
- レアメタルをはじめとする資源の有効活用のため
- 今後のリサイクル社会実装のスタートとして
などの理念を持ち、自動車メーカー各社は積極的にリチウムイオンバッテリーのリサイクルに取り組んでいます。
課題②レアメタル採掘の人権問題
EVの心臓部ともいえるリチウムイオンバッテリーには、
などのレアメタルが使われています。日本ではこれらをほとんど輸入に頼っている状況です。
例えばコバルトは、世界の生産量の54%をアフリカのコンゴ共和国が占めています。しかし、コンゴ共和国は
- 国の情勢が不安定
- 低賃金での労働
- 児童労働
- 紛争鉱物※になるリスク
など深刻な問題が指摘されています。
課題③発電にCO2を排出していたら…?
EVが走る時にCO2を排出していなくても、その電気を発電するときにCO2を排出していては削減効果が少なくなってしまいます。日本は今後再生可能エネルギーや原子力による発電量を増やし、化石燃料による発電は減らしていく計画です。とはいえ、化石燃料での発電の割合が多いのが現状です。
つまり、発電の脱炭素化とバランスをとってEVを普及させないと、急増したEVのために火力で発電量を増やすことになってしまう事態も考えられます。最終的にはクリーンな発電割合が増えるので問題ありませんが、日本の今の段階では急激にEVが増え過ぎると、エネルギーの問題で不都合が起きる恐れがあります。