寮は、以前は2人部屋だったものを、半分に仕切って個室にした、かなり手狭なものだった。
当然、置ける荷物も少なく、片付けるほどでもなかった。
しかし、初めて部屋に女性を招き入れる僕は、掃除機を借りてきて掃除までした。
髪の毛一本も残さないほど、念入りに。
千里を地下鉄の駅まで迎えに行ったのは、日暮れ前だった。
改札からでてきた彼女は、普段通りのハズなのに、とても眩しく見えた。
「今日は一段とキレイだね」
「んもぅ、お世辞言ってもなーんも出ないよ」
「だって、ホントにそうなんだもん」
僕は、シャイで口下手なはずだった。
彼女が、僕をそうさせたのか、それはわからない。
寮まで、手をつないで歩いた。
千里の手は、華奢な体に釣合った、小さくて柔らかくて、僕の手にすっぽりと収まった。
そして、体がぶつかり合うくらい、密着させて来た。
僕は、そんなスキンシップが大好きだった。
寮までの、10分足らずの道のりは、あっと言う間だった。
道中、寮の仲間の誰にも遭うことなく、部屋までたどり着いた。
寮は、規則など割と自由で、女性の立ち入りもOKだけど、午後8時までと決まっていた。
2人だけの時間は余りない。
部屋にはTVもなく、ステレオコンポしか置いてなかった。
千里と並んでベッドに腰掛け、お気に入りのレコードをかけた。
僕の好きなダンスミュージックだった。
「これ、なんていうバンド?」
「ダズバンドって言うんだよ」
「なかなかいいね」
曲は、EW&F風のファンクから、スローバラードへと変わった。
2人の間に言葉がなくなった。
のどが渇く。
動悸も千里に聞こえてるかも知れない。
目が合ったとたん、僕は我を忘れて、唇を奪った。
柔らかな感触と何とも言えない甘い香り。
頭で考えることもなく、ただ本能のままに行動した。
~つづく