最初のキスは、軽く唇にそっと触れた。
そして、頬、鼻、また唇に戻り・・・
回数を重ねる事に激しさは増し、いつしか舌が絡み合った。
穢れなき彼女の魂までも、吸い取るほどのベーゼ。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
いつしかレコードは止まり、千里の短い喘ぎ声だけが響いていた。
薄いベニヤで仕切られた、隣室が気になっていたが、もうどうでもいい。
自分で脱いだのか、僕が剥ぎ取ったのか、とにかく、千里は全裸で横たわっていた。
理性のかけらも無くした僕は、言葉も無くむしゃぶりつく。
搗き立ての餅のような弾力を誇る肌。
密着すると吸い付いて離れなくなりそうなその質感。
いよいよひとつになる時が来た。
怒張したモノをあてがい、一気に押し込んだ。
本能のまま腰を振る。
快感が一気に駆け上がり、頭の芯が痺れる。
アッという間に、千里の中で果ててしまった。
うっすら汗ばんできた彼女の胸に顔を埋め、束の間の余韻を楽しむ。
そして、また長いキス。
言葉はなかった。
時計の針は、規則の午後8時をとっくに過ぎていた。
まだ、千里を帰したくなかった。
「門限破っちゃった」
「あ!!」
「どうせ、もう同じことだし、もうちょっとここにいて。」
「うん、そうだね」
彼女の背後から抱きしめるように座っていた。
僕の一番好きな体勢だった。
千里に、甘い言葉を囁きたかったのだけど、うまく出てこない。
なんだが罰が悪くて、とりとめのない話題で繕った。
どうやら千里は初めての体験ではなかったようだ。
そんなことを気にするよりも、僕が初体験だったのを気づかれたかどうかが、気になってきた。
彼女の態度や言葉からは、想像もつかなかった。
「オレ、初めてだったんだ・・・」
「そうなの?!知らなかった」
「・・・」
「でも、その相手が私だったなんて嬉しいよ」
その言葉だけで、充分だった。
これ以上ない愛おしさが込み上げて、痛がるほど更に強く抱きしめてしまった。
最終電車の時間が近づいてきた。
さて、どうやって千里を寮から連れ出すか・・・
非常階段が屋外にある事を思い出した。
そこまで行く、廊下さえ誰にも見つかれなければ。
僕は、先に部屋を出て、10mほど先の非常階段へと続く扉が開くのを確認した。
そして、千里を手招きして呼んだ。
足音に気をつけて、1階まで駆け降りた。
どちらともなく、笑顔になる2人。
地下鉄までの帰り道、いつものようにつないだ手が、いつもと違う気がした。
千里こそ、運命の人だと思えてならなかった。
そう、あの時が来るまでは。
~つづく