  |
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した超新星残骸1987A。 (Image courtesy NASA/ESA) |
恒星が超新星爆発を起こして死ぬとき、恒星に属する惑星の一部は爆発を生き延びるが、軌道からはじき出され、銀河を漂う“浮遊惑星”となる可能性があるという。
今回の新説は、これまでにいくつか見つかっている浮遊惑星の存在を説明するものであり、天の川銀河(銀河系)にはさらに多くの浮遊惑星が漂っている可能性を示唆している。
「すべての恒星はいつか死ぬ。そしてその多くが、惑星を系外にはじき出せるほどの大きな質量を持っている。したがって、銀河系では恒星の死が浮遊惑星を増やす原因になる可能性は十分にある」と、今回の研究を指揮した英ケンブリッジ大学の天文学者ディミトリ・ベラス(Dimitri Veras)氏は話す。
「この種の惑星がどれほど存在するのかはまだ不明だが、観測が示す証拠は、恒星を周回している惑星よりも、恒星の間を漂っている惑星のほうが多い可能性を示唆している」。
最新モデルはまた、非常にまれなケースではあるが、超新星爆発を生き残った惑星の一部が、爆発後に残った中性子星やブラックホールの周囲に新たな軌道を見出すことで、引き続き超新星残骸に捕われる可能性も示唆している。
◆二体問題をアレンジ
今回の説は、物理学のいわゆる“二体問題”を考慮に入れた、一連の複雑なコンピューターモデルに基づいている。
古典力学におけるこの二体問題は、相互作用を及ぼす2つの物体の軌跡を確定する上で役立つ。そのような2つの物体とは、例えば原子核とその周囲を回る電子や、恒星とその周囲を回る惑星などだ。
2つの物体の質量、位置、速度さえ測定できれば、簡単な方程式を用いてそれらの過去、現在、未来における軌跡を確定できる。
しかしベラス氏によると、今回の研究では、二体問題に新たな要素を加えているという。なぜなら、恒星はその最期を迎える過程で質量を失うからだ。
「このような状況では、簡単な方程式のみで得られる完全解が存在するのかどうかわからない。そのため多くの場合、コンピューターを使って軌道をシミュレーションすることが必要になる」とベラス氏は言う。
今回のモデルによると、われわれの太陽の少なくとも7~10倍の質量を持つ恒星が超新星爆発を起こした場合、爆発はその恒星系の内惑星(この場合は、地球‐太陽間の数倍までの距離の軌道を回る惑星)をすべて飲み込む。
これに対し、地球‐太陽間の数百倍の距離の軌道を回る惑星は、軌道が乱れて恒星から遠ざかっていき、やがては恒星間空間に放り出される。
また場合によっては、軌道の乱れた惑星がより遠くの、しかし安定した軌道に乗って、超新星残骸を周回することもある。
このような惑星は、恒星爆発後に残ったパルサー、あるいはブラックホールの周囲でさえ回り続ける可能性がある。十分に距離が離れているため、その強い重力に飲み込まれずにすむのだ。ただし、爆発を生き残った惑星は、焼け焦げた死の世界となる。
さらに、それらの遠く離れた惑星は、他の近傍恒星の重力の作用によって、たやすく系外へはじき出され、浮遊惑星に転じる可能性もある。
◆数千億もの浮遊惑星が存在?
2011年5月には、別の天文学者チームが、恒星間空間を単独で浮遊しているとみられる惑星が最大10個存在することを、観測データから確認したと発表している。
新たに見つかったこれらの惑星は、属していた恒星系をいかにして離れたのか。今回示された放出メカニズムは、その理由を説明するものかもしれないと、ペンシルバニア州立大学の天文学者、ステイン・シガードソン(Steinn Sigurdsson)氏は述べている。なお、シガードソン氏は今回の研究には参加していない。
ただし、惑星が恒星系からはじき出される過程には、また別のメカニズムが作用している可能性もあるとシガードソン氏は言う。
「もうひとつの主要メカニズムとして考えられるのは、惑星‐惑星散乱だ。これは大質量の惑星が他の惑星を軌道からはじき出してしまうもので、その一部が浮遊惑星として外宇宙に放出される」。
シガードソン氏によると、この2つのメカニズムが両方とも作用している可能性もあるという。散乱効果によって惑星がより遠くの軌道に飛ばされ、さらに超新星によって系外にはじき出されるのだ。
いずれにせよ、これらの可能性は、多数の浮遊惑星が存在することを示唆するとシガードソン氏は考えている。
「浮遊惑星の数は(いずれの放出メカニズムでも)おおむね一貫しており、いずれの場合も、全部で数千億もの浮遊惑星が存在する可能性が考えられる」とシガードソン氏は述べている。
今回の浮遊惑星についての研究は、プレプリント版がWebサイト「arXiv.org」で公開されており、また「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌に提出されている。
Andrew Fazekas for National Geographic News
宇宙の構造って不思議だね。