もう慣れましたけども、
「泳げるの?」と時々聞かれることがあります。
高校を卒業するまで、こんな質問をされたことがなかった私は呆然とします。
「日本人ですか?」と聞かれるよりも、もっとびっくりです。
私もそうですが、東アジアの顔の違いなんか見分けつかんという人も多いでしょう。しかし泳げない人はいるの?
そのくらい泳げて当たり前の地域で育ちました。
それはそれで困ったことも生じます。
海へ行くと、沖まで一気に泳いでぷかぷか浮いているのが私の遊び方です。
その日もいつも通り沖で寝ていたのですが、気が付くと随分と流されているようでした。ゆっくりと浜辺を目指して戻ろうとしたのですが、何やら次第と波が大きくなっているみたい。全速で泳いでしばらく休憩。そのうちにまた流されて、また全速で泳ぐ。
別に危険を感じるほどではなかったのですが、だんだんと疲れてきました。
そこへ助け舟。
ポンポ~ンと小舟が見えてきました。
「おっちゃーん!助けてー。溺れたー」
「お~、こんなとこまで泳いで来たかー。達者やのぅ」と笑いながらポンポ~ンと去って行きました。
鳴門の海でのこと。
俺を殺すつもりか?薄情すぎます。
その前年は台風前日に泳いでいました。
海の家の強欲ババァが、
「ちょっと波きたけど大丈夫!兄ちゃんたち若いし、これくらいスイスイや」
その割には、他に泳ぎ客がいないのに違和感を持ちながらもスイスイとやってしまうわけです。
一人が波にのまれ、あっと思った瞬間に私が持っていかれ、後の者も流されたことは間違いない。
ほんまに死ぬかと思いました。
とにかく出鱈目に泳ぎ続け、元いた浜辺から2キロ以上も離れたところに辿りつきました。
一人、二人と死にそうな顔で生還し、ババァに文句のひとつでもと思ったのですが止めました。
浜辺にワニがいても、「大丈夫、大丈夫」言いそうな婆さんに怒っても虚しいだけです。
鳴門の海は薄情で怖いから、それ以降、競艇場の他は近づいていません。