「将棋必勝本」や新聞、雑誌の詰め将棋欄で、定石や戦法を学ぶにつれ将棋の奥深さを
思い知らされた。周りに将棋好きな連中はいるが、飛びぬけた存在の強い奴はいなかった。
その中で博識の先輩の方が口にした「一言」が、その後の私の人生を苦しめることになる。
「おい、○○、将棋の駒を全部使って、お互いの駒が干渉しないように基盤を埋めることが出来るか?」。要は、それぞれの将棋の駒が動ける範囲を上手く重複させて、どちらの駒も取られないように配置する、という出題だった。果たしてそんな事が可能なのか。半信半疑のまま早速、家に帰って挑戦。片っ端から駒を並べ替えてみるも、全然出来ない・・・。それからは時折、暇を見つけてその難問に挑み続けた。然し、いつまで経っても達成しなかったので、半ば心が折れた状態のまま、いつしか時が過ぎた。
いつしか将棋から離れて数年が経ち、社会人になって再び、社内の同僚たちと将棋を指す機会が訪れた。4~5人いた将棋メンバーに、件の難問を出題したが誰一人として成功する者はいなかった。「絶対無理!出来る訳がない。」皆、口を揃えてギブアップ宣言が出た。
だが、私は諦めなかった。「絶対出来るはずだ」。勿論、本屋に行って将棋関連本の中に「答え」が載っているのがあるかもしれない、それこそ、ネットで検索すればすぐに「正解」に辿り着くのは容易だろう。私はそんな楽な道は選ばなかった。なんとしても「自力で解決したい」の一心で、ひとりで苦悶する道を選択したのだった。
その無理難題と格闘すること約20年。遂に・・・私は勝った。基面に完成形が出来上がった時、「!?」。間違いないか、まじまじと基面を見詰めた。「ホントか?」。それこそ何千回と跳ね返され、失敗の連続だったので俄かには信じ難かった。だが、ひとつひとつの駒の配置を確認、間違いないと確信した時の喜びたるや、筆舌に尽くし難いものがあった。暫くは、正解の配置図を眺めつつ「よくぞ諦めずに此処まで辿り着いたものだ」と、自分自身に感心した。
難攻不落の問題を提示してくれた先輩とはその後、音信不通になったので成功の報告は出来ないが、今となってはとても感謝している。たかが、将棋のひとつの設問ではあるが、不屈の精神でやり遂げた「達成感」は何物にも代え難いものだから。
そして今、私の将棋人生は、また別の局面を迎えている。
(次回へ続く)