生活保護受給者など所得の低い高齢者にとっては「十分にあり得る」ことのようだ。
エアコンにお金が回らない!
そもそも、エアコンが設置されていない家庭は「ほとんどない」と思っている人は少なくないはずだ。
内閣府の「消費動向調査」によると、2015年3月末の耐久消費財の普及率で、一般世帯のエアコン普及率は91.2%。前年と比べると0.6%ポイント上昇した。
9割を超え、薄型テレビの97.5%や携帯電話の94.4%と比べてもそん色ない。いまや1世帯に3台はエアコンが置かれているという。
しかし、その一方で「エアコンが買えない」人がいないわけではない。エアコンの価格はひと頃よりもだいぶ安くなった。家電量販店では設置費込みで、数万円で購入できるようになったが、それが捻出できない人もいる。
東京都生活福祉部保護課によると、単身男性の生活保護費は月々およそ13万円台で、これには住宅費や光熱費などが含まれている。
そうした中で、4年前の2011年夏(6~9月)に熱中症で79人の死者を出した東京都(数字は23区内)では、あまりの暑さから緊急措置として「生活保護世帯に対する冷房機器設置の緊急支援策」を実施。生活保護を受給する世帯の高齢者(原則65歳以上)に対して、エアコン購入費用として、1世帯あたり上限4万円を1回に限り支給した。
現在この措置はなく、エアコンの購入費用は東京都社会福祉協議会が貸し付ける制度に代わっている。その実績は2014年度に90件で、東社協は「14年度は多かったように思います」と話す。15年度は7月16日までに、17件に貸し付けている。
貸し付けは、生活保護を受けていても条件をクリアすれば借りることができるが、返済を伴うので借りるのを躊躇したり、「エアコンなし」でガマンしてしまったりする人は少なからずいるとみられる。
エアコン、1か月つけっぱなしで1万円近くに
一方、熱中症で搬送される人の半数以上が高齢者とされ、しかも屋内で倒れるケースが少なくない。東京都福祉保健局によると、熱中症で死亡した人は2014年夏(6~9月)に、東京都23区内だけで38人。このうち、屋内で死亡した人は34人で、しかも夜間に亡くなった人は13人もいた。
死亡した38人を年齢別でみると、最も多かったのは70歳代で12人、次いで80歳代が11人、60歳代は10人と高齢者ばかり。男性のほうが多い。
さらに屋内で亡くなった人のうち、単身住まいは23人。このうち、エアコンがあったのは2人で、なかったのは18人にのぼった。家族と同居していて、エアコンがなかった人(11人)をあわせると85.3%にエアコンがなかったのだから、「エアコンなし」が明らかに熱中症のリスクを高めているといえそうだ。
ふだんは昼にエアコンを使っても、夜はエアコンを切ったり、扇風機で済ませたりして、寝ている人はいるはずだが、最近は夜間になっても気温が下がらない熱帯夜が少なくない。エアコンを使わなければ眠れないという人もいるだろう。
そうなると、気になるのがエアコンにかかる電気代だ。東京電力によると、一般家庭の場合、エアコン(1000Wの場合)を1日中つけっぱなしにすると、電気代は約480円になる。機種や耐用年数などによっても変わるが、一般にエアコンは冷蔵庫とともに電気代がかかる家電製品とされる。
仮に1か月つけっぱなしだと、エアコンだけで1万円近くかかりかねないのだから、生活保護の単身住まいの高齢者が「ガマン」したくなる気持ちはわからないでもない。
高齢者が熱中症に罹る原因は水分不足がほとんど。高齢になると暑さを感じにくくなったり、のどの渇きに鈍感になったりもするという。
暑さを感じないからエアコンをつけない、のどが渇かないから水分を摂らない。これまで「エアコンなし」で過ごしてきたため、「わざわざ使う必要がない」、ひとり暮らしで周囲に気を遣うことがないので、「自分さえガマンすれば、なくてもいい」と考えてしまうこともあるらしい。
老人は自分のことを老人と思っていない!?
連日、猛烈な暑さが続くニッポン列島。毎日あまりに暑いので、お天気お姉さんが「本日の最高気温は30℃です」と、報じるのを聞いて、「今日はだいぶ涼しいな」と、思ってしまったほどだ。
7月23日には埼玉県熊谷市で41.1℃を記録し、5年ぶりに国内最高気温を塗り替えたという。ときに「殺人的な暑さ」と表現されるが、実際に熱中症で亡くなる人は後を絶たない。特に高齢者の死亡例が多いと聞く。
歳をとると、体温調節機能が低下したり、暑さを感じにくくなったりするので、熱中症になると、若者よりも重症になりやすいという。メディアでも繰り返し、「寝る時にエアコンをつけるなど、高齢者は熱中症対策を」と注意喚起しているにもかかわらず、なぜ、高齢者の死亡例が後を絶たないのかと思ってしまう。そこで、現役の高齢者である実母(70代)に、
「さんざんテレビで言われているのに、なんでエアコンをつけずに死ぬ老人がいなくならないのか」
と、尋ねてみた。すると、
「お前には老人が老人に見えるだろうが、老人は自分のことを老人だとは思っていない。実際、あたしも気持ち的には40代」
という驚きの回答が。いくら、「お年寄りのみなさんは熱中症に気をつけてくださいね!」と注意したところで、己に「お年寄り」の自覚がないので、自分に対するアドバイスだとは思わない、ということらしい。目からウロコである。確かに、私も傍から見ればどこに出しても恥ずかしくないババアだが、気持ち的には完全に20代なので非常に納得した。
ところで、この猛暑にも意外な利点があるという。「気温が35℃を超えると、蚊は活動を停止する」説である。確かに今年はまだ深夜に耳元で不快な羽音を聞かされてないし、かゆみ止めにもお世話になっていない。とあるニュース記事によると、蚊にもさまざまな種類がいるため、一概に「35℃になると活動を停止する」とは言えないが、蚊が活発に活動する気温は26℃から32℃なので、その説は妥当、とのことだ。
真夏の炎天下で子供に人文字を作らせたり、連日、野球の試合をさせたりする人間に比べ、高温に危機を感じて活動を自粛する蚊は、ある意味、われわれよりも賢い。人類も蚊を見習い、最高気温が35℃以上の日は、クーラーを19℃設定にし、自宅に引きこもってひたすらカキ氷を食いまくるなど、生命維持のために最善を尽くすべきではないかと思いはじめた私である。
別のサイトを見ると暖房と冷房を間違える高齢者もいるようです。
「昔みたいにクーラーと暖房が別だったら、こんな心配はしなくって良かったのに…」と、エアコンの危険性を指摘している。
このように、高齢の利用者の“温度感覚のズレ”にまつわるトラブルは少なくないようで、ネットに寄せられた書き込みを見てみると、
「暑いのになぜか布団にくるまるんだよな」
「蒸し暑いのにエアコンも付けず布団にくるまり…」
「この暑さでも寒いって言ってる方いる」
といった例が報告されているようです。認知症ゆえに暖房がついていることに気づかない人もいるようです。