予期せぬ事は予期せぬ日に訪れる。
いつものように、コンサートの帰り道、彼女がおずおずと切り出した。
『あのね、わたし付き合ってる人いるの』
『そ、そうなんだ・・・』
ほんの1メートルほど先の彼女に伝わっているのではないかと思うほど、胸の鼓動が高鳴った。
どうして今頃になってそんな事、僕に言ったのだろう?
もしかして、僕の気持ちに気付いたのだろうか?
ただ一つ確かなのは、告白の機会を逃してしまった事だった。
大学2年になり、一つ上の彼女は短大を卒業し、社会人となった。
彼氏との付き合いも順調そうで、そこに入り込む隙間も見つけられなかった僕は、そのままの関係を続けることを選んだ。
コンサートだけではなく、彼女の得た収入で食事も行ったりした。
気持ちを隠し続けたままでも、彼女との時間を失いたくなかった。
もし、勇気を持って告白できていたら、どうだろう。
優しい彼女を困らせるだけだったかもしれない。
きっとこれでいいんだ。
人を好きになるだけで、こんなに暖かな気持ちになれる。
彼女はダメだったけど、他に好きになれる人を見つけよう。
そんな風に少しずつ、思えるようになった。
誰も知ることなく、初めての恋はこうして儚く散っていった。
~おわり