それから、しばらく経って彼女に電話することにした。
デートに誘うつもりでもなく、もちろんデートプランなんて考えてもいなかった。
ただ、彼女と話がしたかっただけ。
声が聞きたかっただけ。
そして、デートのチャンスは意外にも訪れた。
『あのね、洋楽とか好き?』
『はい?』
『○月○日にコンサートあるのだけど良かったら一緒に行く?』
『え?!いいんですか!行く行く!』
彼女の方から、お誘いがあるなんて夢にも思わなかった僕は、気が動転して思わず即答してしまった。
ギター小僧で、ニューミュージックとかフォークソングしか聞いた事のない僕が・・・
次の日から、レンタルレコード店に通うこととなった。
ビルボードのチャートが置いてある店で、チャート上位の曲・歌手を片っ端から借りていった。
ロック系、ソウル系、アダルトコンテンポラリー、ジャズ・・・
とにかく、ジャンルを問わず何でも聴いた。
そう、彼女こそ音楽の素晴らしさを、僕に教えてくれた人だったのだ。
猛勉強の甲斐あって、会場の日本武道館に行く間も、音楽の話で盛り上がった。
そして、僕自身も好きになったアーティストの歌と演奏。
隣で僕と同じように楽しんでいる彼女。
夢のような時間はあっと言う間に過ぎていった。
彼女の住むアパートは電車の駅から数分歩いた所らしく、送って行く事になった。
コンサートの余韻と、彼女と夜道で二人きりというシチュエーションが、僕の気持ちを高ぶらせたのかもしれない。
手をつなぎたい衝動に駆られた。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、時折、小さく微笑みながら歩いて行く彼女に、何もすることはできなかった。
『もうすぐだから、ここで良いから』
アパートに上げてもらおうなんて下心は、もちろんなかった。
せめて、家の前までの時間を共有したかっただけなのに、それもままらなかった。
それから、何度かコンサートに一緒に行ったのだが、2人の進展は全くと言っていいほどなかった。
彼女の行きたい所に僕がついて行く、そんな関係。
でも、僕の中で、彼女の存在はどんどん大きくなっていった。
僕の気持ちを、伝える時なのだ。
しかし、想いと裏腹に現実は残酷だった。
~つづく