キリ 
(桐、学名: Paulownia tomentosa)は、シソ目のキリ科 Paulowniaceaeキリ属の落葉広葉樹。別名、キリノキともよばれ、漢語の別名として白桐、泡桐、榮がある。初夏に特徴的な淡紫色の花を咲かせる花木で知られる。
属名はシーボルトが『日本植物誌』(1835年)においてアンナ・パヴロヴナに献名したもの。ただしシーボルトが与えた学名はP. imperialisであり、後にツンベルクが1783年にノウゼンカズラ科ツリガネカズラ属としてBignonia tomentosaと命名していたことが判明して1841年に現在のものに改められた。
キリとアオギリはまったく異なる種である。中国で古くから両方に「桐」の字を用いているために混乱が生じている。『斉民要術』ではアオギリを「青桐」、キリを「白桐」と呼び分けている。現在の中国ではアオギリを「梧桐」、キリを「泡桐」と呼ぶ。アブラギリも葉の形が似ているだけでまったく異なるが、おなじく桐と呼ばれる。
英語の「princess tree」は、属名の Paulownia の語源であるアンナ・パヴロヴナがロシア大公女であったことに基づく。
中国の揚子江流域、韓国の鬱陵島、日本では大分・宮崎県境の山岳地帯に自生地があるが原産地は不明である。日本では特に東北地方、関東北部、新潟県などにおいて植栽される[5]。中でも福島県の会津桐や岩手県の南部桐などが有名である。本州中部以南ではテングス病の影響を受けやすい。このほか日本各地に野生化したものがみられる。
落葉広葉樹。キリは成長する高さ15メートル (m) 、幹の直径は50センチメートル (cm) にもなる。丸く横広がりがある樹形になり、樹皮は灰白色。日当たりの良いところを好む性質で、短期間で早く生長する。
葉は長い葉柄がついて対生し、葉身は長さ10 - 20センチメートル (cm) ほどある広卵形の大きな葉をつける。葉縁は全縁または浅く3裂し、葉の表面は粘り気のある毛が密生する。
花期は5 - 6月。枝の先に大きな円錐花序を直立につけて、淡い紫色の花を円錐状につける。花冠は長さ5 cmほどの筒状鐘形で、先は口唇状に裂ける。
翼(よく)のついた小さい種子は風でよく撒布され、発芽率が高く生長が早いため、随所に野生化した個体が見られる。アメリカ合衆国でも野生化して問題となっている。
キリは古くから良質の木材として重宝されており、下駄や箪笥、箏(こと)、神楽面の材料となる。また、伝統的に神聖な木とみなされ、家紋や紋章の意匠に取り入れられてきた。
キリは日本国内でとれる木材としては最も軽い(比重0.27-0.30)。また、湿気を通さず、割れや狂いが少ないという特徴がある。日本では家具、器具、建具、箪笥の材料とされてきた。桐箪笥は高級家具の代名詞で、かつて日本では女の子が生まれるとキリを植え、結婚する際にはそのキリで箪笥を作り嫁入り道具にするという風習もあった。桐材は箏の材料にも用いられた。また、釣具の浮子にも利用された。
またキリは発火しづらいという特徴もあるため、金庫などの内側にも用いられる。日本各地で植栽されていたが、需要の高まりや産業構造の変化により北米、南米、中国、東南アジアから輸入されることも多い。
桐炭は研磨用、火薬用、眉墨に利用された。
日本には白桐をもとに意匠化された紋章がいくつかある。それらを総称して桐紋もしくは桐花紋という。中でも公的機関のシンボルとして多用されている五七の桐と一般的に家紋として広まっている五三の桐呼ばれる紋が代表的であり十大家紋に挙げられるほど多く見られる。 古代中国では聖王を象徴する鳳凰が「梧桐の木に宿り竹の実を食う」とされ神聖視された[5][9]。日本でも嵯峨天皇の頃から天皇の衣類の刺繍や染め抜きに用いられるなど、「菊の御紋」に次ぐ高貴な紋章とされた。また中世以降は天下人たる武家が望んだ家紋でもあり、足利尊氏や豊臣秀吉などもこれを天皇から賜っている。このため五七の桐は「政権担当者の紋章」という認識が定着することになった。
近代以降も五七の桐は「日本国政府の紋章」として大礼服や勲章(桐花章、旭日章、瑞宝章)の意匠に取り入れられたり、菊花紋に準じる国章としてビサやパスポートなどの書類や金貨の装飾に使われたり、「内閣総理大臣の紋章」として官邸の備品や総理の演台に取付けられるプレートに使われている。過去に存在した国鉄の紋章も桐紋に蒸気機関車の動輪を組み合わせたものだった。
また、皇宮警察本部や法務省では「五三の桐」が紋章として使われている。
花札では12月の絵柄として、「桐に鳳凰」、カス3枚が描かれる。
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