第五章 木花城
ここは木花城の城下町。
たくさんの種族が往来している。
わむたんの世界では見かけないような、生き物だ。
商店の数も多い。
城に続く通りに沿って武器店、防具店、食料品店、雑貨店などいろいろ並んでいる。
わむたん達は、魔法薬店の看板を捜して歩いた。
「わむたんさま・・・あれはなんでしょ?」
乙橘が見つめている先に何か大きな物が棒に挿されて火にかけられてぐるぐる回転している。
クーはそれを見ると、走って駆け寄った。
石にされた梟導師を戻すのを手伝うと言ってクーはついてきたのだ。
そして・・・クーの冷たい息がかかると、火が消えてしまった。
「あらま!あんた達困るね。」
グロング族のおばさんが怒っている。
「ごめんなさい。それ買います。」
「おや。買ってくれるのかね。助かるよ。木花城があった時はこの町ももっと栄えていたんだけどね。今じゃ前程のお客さんは来ないからね。ほらあの城を見てごらん。」
おばさんの指差した方を見るとさぞかし昔は立派であっただろうと思える城が今では朽ち果てている。
「あれはどうしたのかな?」
わむたんは尋ねた。
「もう何年程前になるかね。ある時突然魔物の大群が襲ってきて城の人間は皆殺しにされちまったのさ。二人の姉妹のお姫様もどっかに連れ去られたって噂だよ。それ以来あの城は廃墟さ。」
「そんな事があったのですか・・・。」
わむたんはそう言うと懐から金鉱ダイヤの袋を取り出した。
この世界では金鉱ダイヤが通貨である。
わむたんは前に梟導師からそれを貰っていた。
「三キロムでいいのかな。で、これは何のお肉なの?」
「これは上等な白革なまずのお肉ですよ。ま、美味しいから食べてみてくださいよ。」
「クークークー・・・」
クーは嬉しそうな声をあげている。
「あとであげるね。」
わむたんは微笑みながら、そう言った。
「ところで、猫耳族のキトさんが経営している魔法薬店を知りませんか?」
「満月屋かね。この通りを真直ぐに行った右側にあるよ。」
「ありがとうございました。」
わむたん達は通りを歩き出した。
この町の店と通りの間には木々が点々と植えられている。
その木々の後ろからわむたん達をじっと見つめる影があった。
何者であろうか、黒いフードを身に付けている為顔は見えない。
(お願い:この作品はポプラ社小説大賞応募予定作品につき、作品の模倣、一部の複写等の行為はご容赦ください。☆一部名称等ニフティに帰属する部分は投稿時に変更することとする。☆この作品の著作権はわむたんに帰属します。)