「桜の思い出」
一年前の桜が満開の時節… 友人が夜のドライブにさそってくれた。
「いいところがあるのよ」と彼女は片道一車線が ひたすらまっすぐ続く道へと行先を変えた。
その道路は街灯などなく、ほとんど真っ暗。交通量は比較的多かった。
しばらくしてくると、前方からアーチ上のものが ぼんやりとみえてくる。
目をこらすと、ソメイヨシノが道路の両脇に満開に咲きほこり、自然の桜アーチになっていたのだ。
アニメなど空想の世界では おなじみの風景かもしれないが、現実にまのあたりにしたのは生まれて初めてだった。
夜の闇に ぼんやりと見える桜のアーチは とても幻想的で「まるで夢をみているよう」 この世のものとはおもえないような不思議な、そして魅惑的な雰囲気があったのだ。
彼女と「綺麗ねー」とひとこと言い合ったのみで、お互いに その死守エーション… いや、シチュエーションを黙ったまま ひそかに堪能した。
アーチが途切れたところで、車をUターンさせ、再びアーチを抜けて帰路に着いた。
こうしてこの日記を書いているうちに、あの風景がよみがえる。
あともうすこし頑張れば、あの風景に再会できるのだ。
今はそのことが心の支えのひとつなのかもしれない…