寄りかかるように、松葉色の扉に身体を当ててゆっくりと押し込む。
もれてくる薄闇と珈琲の香り。
雰囲気に重なるように、中へ。
カフェ"Une infirmiere du chat du chat"に通うようになって久しい。
コルク色を基調とした調度品と穏やかなBGM。
窓から差し入る光の角度。カウンタには無表情で白髪の店主。
細身でいつも凜としている(おそらく)夫人。
笑顔の絶えない給仕の(ちょっと胸の大きい)女の子。
このカフェを構成する全てが心地よく、
長居をしてしまうのが常だった。
文庫本片手に訪れたのだが、
今日は思いのほか混み合っていた。
花火大会目当ての客が訪れているのだろう。
僕の定位置(ゆったりソファーの一人席)は奪われていた。
やむなく小窓に面して配された横並びのカウンターに小さく座る。
いつも通りキリマンジャロを注文。
文庫本のブックカバーの手触りと、
傾いた栞の刺さり方を見て物語の続きを思い出す。
そうして僕の時間がはじまる。
置かれたオールドノリタケの白磁も、
縁取りの金彩も、いつの間にか僕の一部となって、
珈琲の香りと共にまどろんでいく・・・
「失礼します」
不意に、頭の斜め後ろから声が降ってきた。
振り返るとおとなしそうな細身の女性が、僕の横の椅子を引いている。
「お隣、失礼します」
混み合っている店内、空いているのはこのカウンターの
僕の横だけだった。
「どうぞ」反射的に答えて、必要ないけれど椅子をずらして意志を示す。
簡単な会釈を投げて、彼女は腰をおとした。
穏やかな物腰と落ち着いた服装。
若いのかもしれないが年上に見られるタイプだと思う。
注文を済ますと、彼女は馬車柄のハンドバックから
厳かにiPadを取り出してコルク色のカウンターに乗せた。
アンチーク調の水平に鉄紺の肢体が沈む。
意外な感じ。細い指で画面をなぞる姿が美しい。
この気品ある女性はiPadで何を見ているのだろう?
僕はとても気になって、目だけ動かして液晶画面をのぞき見た。

!!
「それMILUのマイページじゃん」
思わず声を上げた。
「えっ!」女性は腰を上げて僕を見る「わかるんですか?」
僕はよくインしていると答えて笑った。
聞くと、彼女もMILUにハマっており
外出先でもコミュニティを読みたくてiPadを購入したという。
隣り合った女性がまさかのMILU好き・・・(しかも重度の)
そのとき、空高く弾かれた花火の響音が
花火大会と、恋のはじまりを夕闇に告げた―
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これがわしと師匠の出会いのきっかけでした(うそw)
またしても完全妄想でお届け!
出会えるMILUってこういうこと・・・かと・・・