ゴッホが好きだ。
オランダ出身で印象派の画家として名高い稀有の人物である。
“日本人の最も好きな画家は?”のアンケートでも、ダントツの
一番人気を誇るほど、国内で彼のファンは多い。
“炎の画家”としても知られるゴッホを初めて知ったのは、
小学生の時だった。学校の図書館で、たまたま開いた美術本。
そこには、ゴッホの自画像の絵があった。衝撃だった。
独特の筆のタッチと、あり得ない色使い、鋭い眼光を放つ
作品からは不思議なオーラを感じた。
もともと、漫画を描くのが好きだったせいもあり、絵画には
興味があったのだが、ゴッホの絵に心を鷲掴みにされた。
時が経ち、東京での忙しい生活の中で、美術館巡りが
愉しみの一つとなった。
様々なジャンルの美術展に足繁く通った。その中でも、
ゴッホ展は何が何でも、万難を排してでも必ず観覧した。
そして再び、子供の頃に心を奪われたあの自画像の本物と、
対面する事が出来た。新宿副都心・安田火災海上ビルの
東郷星児記念館で開催されたゴッホ展。
思ったよりも、小さな額に収まった作品だったが、
長い間離れていた恋人と再会したような、幸せな時間を過ごせた。
無論、帰り際には出口付近で陳列販売されていた自画像の複製画を
購入するのを忘れなかった。
約130年前に描かれた「灰色のフェルト帽をかぶった自画像」は
今、故郷オランダにあるアムステルダムのファン・ゴッホ美術館に
収められている。死ぬまでに訪れてみたい願望はあるのだが・・・
実現は難しいだろう。
我が家の寝室の壁に飾っている複製画で我慢しよう。