アメリカがベトナム戦争の泥沼に嵌まり込んでいた1960年代。
反戦運動が激しくなり、ヒッピーと称される若者たちが爆発的に発生、
アメリカ社会の大きな変革の時代に、突如現れた歌姫がいた。
彼女の名はジャニス・ジョップリン。不遇の死で夭折した伝説のシンガーだ。
当時のアメリカ音楽シーンを席巻していた、超一流ミュージシャン達が
顔を揃えるモントレー・ポップ・フェスティバルや、ウッドストック・
フェスティバルなどに飛び入り同然で参加。並みいる豪華出演陣に
勝るとも劣らない歌唱力で、その圧倒的な存在感を放った。
白人でありながら、まるで黒人独特の唱法を備えた天性の歌声の
持ち主であった。腹の底から絞り出すように絶唱する魂のこもった姿に
人々は魅入られた。
代表曲に「ムーブオーバー」「クライベイビー」「ミーアンドボビーマギー」
「ベンツが欲しい」等があるが、私の心を最も震わせる曲は、
往年の名曲をカバーした「サマータイム」。心に沁みる必聴の歌である。
ジャニスの前にジャニスなく、ジャニスの後にジャニス無し、と云われるほど
唯一無二の天才歌手。
正直、決して美人ではないし、どちらかというとそばかすだらけの不細工
顔だ。それが多感な時代の、イジメの対象になった。
容姿にコンプレックスを抱いていたのが、彼女の人格形成に
影を落としたのかもしれない。彗星のごとく現れたスターは、酒に溺れ
ドラッグに染まっていった。そして、彗星は彗星らしく短い生涯を閉じた。
1970年10月4日。ロサンゼルス・ハリウッドにあるランドマーク・
モーター・ホテルの105号室。ベッドの横で死亡しているのが発見された。
ヘロインの大量摂取が原因だった。享年27歳。あの日から47年。
伝説になったロックの女王は、今も我々の心に生きつづけている。合掌。