10月とは思えない蒸し暑い日が続いているが、暦の上ではもう秋。
「今は、もう秋、誰もいない海・・・」こんな歌もあったが、この季節になると
私の好きな歌人、若山牧水の句が、頭を過る。
「白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり」
※(白珠のような美しい歯にしみとおる酒、秋の夜の灯の下でくむ酒は、
静かにひとりしみじみと味わいながら飲むのがよいものだ)
人生を達観したような内容だがなんと、彼が26歳の時の歌である。
「それほどに旨きかと人のとひたらばなんと答へむこの酒の味」と、続く。
号の牧水の牧は母親の名前、「まき」から。そして、長男には旅人
(たびと)と名付けた。家族を愛する粋な男であった。
吟遊の歌人は、死の間際も朝から100CCもの酒を飲んで、
昭和3年、9月17日、43歳で黄泉の国に旅立った。
きっと、幸せな人生だったろう。