その痛みは突然襲ってきた。
もうだいぶ前になるが、出勤時に腰から腹部に掛けての辺りが、締め付けられるような
変な圧迫感を感じていた。会社に着いて、就業前にトイレで小用を足していたら、
我が目を疑う光景に血の気が引いた。便器に溜まった排泄液が茶褐色になっている。
血尿だった。今まで、見たことがない尋常じゃない小便の色に愕然として狼狽えた。
「いよいよ、迎えが来たか・・・」。一瞬そう思った。「日頃の不摂生極まりない生活のツケが
遂に廻ってきた」と、心底思った。
職場に戻ってみたものの、時間が経つにつれて腰回りの痛みは増すばかりだった。
ピンポイントで「此処が痛い」と特定出来ない痛みに不安が募った。額からは脂汗が
滲み出て、体をよじってもうずくまっても、どんな体勢になっても痛みが和らがない。
暫く激痛に耐えていたが、我慢も限界に到達。もはや仕事どころじゃなくなった。
同僚に、「具合が悪いので、少し横になってくる。すぐに戻るから。」と言い残して休憩室
で体を横たえた。吐き気も催し、発熱で頭も割れそうになり、昼休み時間終了までの間、
七転八倒の状態が続いた。段々、意識が朦朧とした頃、同僚から話を聞いた上司が
駆け付けてきた。「一体どうしたんだ、お前のその状況は普通じゃない。手遅れになる前に、
自分が病院に連れて行くからすぐに準備しろ。」
言われるがままに車に乗せられ、会社から30分程の総合病院に到着。
もう歩くのさえままならず、上司に脇を抱えられながら受付に向かった。入口から入ってくる
様子を見ていた医者に「結石ですか?」と、ずばり言い当てられた。
採尿後、「すぐに入院しましょう。ご家族の方には連絡を入れておいてください。」と、有無を言わさず点滴と痛み止めの注射を打たれた。入院は固辞した。医者には「明日、レントゲンを撮りますので、食事は控えて下さい。」結局、その日は食事抜きになってしまった。
付き添いの上司に自宅まで送って頂き、翌日、会社を休み再び3駅隣の病院へ直行。
診察室前の長椅子には、同じ症状で顔を歪めている数人の仲間が順番を待っていた。
(明日へ続く)