もう、10年以上も前のゴールデンウィークの苦い思い出話。
「今度の連休は浅間山にキャンプに行こうぜ!」 仲の良い職場の同僚に誘われた。
GW後半の早朝、気心の知れた10名程の仲間が浦和にある会社の駐車場に集結。男性と女性が半々のメンバー構成になった。下戸の一人を除き皆、「お酒上戸」の面々である。車3台に分乗していざ出発。行き帰りのコースを確認する程度で、きっちりとした計画は立てず、のんびり気ままなノープラン旅がスタート、一路長野方面へと向かった。
キャンプ用品は揃っていたが、途中休憩がてら食料&飲み物の調達で軽井沢に立ち寄り、しばしの散策&買い物タイム。昼過ぎには集合場所の浅間山火山博物館に到着。館内を見学して浅間山の噴火の歴史を勉強。溶岩が冷えて固まった「鬼押出し」の中にある町営のキャンプ場からは、やや離れた場所にテントを設営した頃には、辺りはすっかり夜の帳が降り始めていた。
いよいよ、待ちに待ったメインイベントのバーベキューが「カンパーイ!」の音頭で始まった。ちょっと奮発して買った高級な肉類と共に、大量購入したビールやワインが瞬く間に吞兵衛たちの胃袋へと消えてゆく。
5月の時季とはいえ、さすがに標高2,568mの山だけあって、涼しいを通り越して寒い。
クーラーボックスから取り出す冷えたビールは、最初は旨かった。が然し、宴もたけなわに差し掛かった頃、外気温がどんどん下がってきた。温度計の表示はマイナス2℃を指していた。
念の為に持参してきた防寒具に身を包んでいたが、背筋が固まりブルブル体が震えてきた。
つい買い過ぎてしまったビールの消費を促進していたが、体の反応は正直だった。「そうだ、日本酒があった。熱燗にして体温を上げよう。」異論はない。やせ我慢で飲んでいたビールをやめて人肌どころか、唇が火傷をするんじゃないかという程の熱燗を「ハフハフ」と体内に運んだ。
一時だけ温まった。外で飲んでいるのですぐに体が冷える。日本酒は一升瓶が一本だけだった。あっという間に空になった。既にワインは飲み干していたが、ウイスキーがまだ一本残っている。「ホットウイスキーがいいんじゃない?」酒豪の女子が提案した。無論、異論はない。
ほんの15分でスコッチウイスキーは空瓶になった。
遂に酒は切れてしまった・・・。誰もがそう思った時、もう一人の酒豪女子が呟いた。「まだビールは残っているよね?」コイツは何を血迷ったことを言ってるんだ・・・寒いからビールを止めたのに・・・「ホットビールにしたら?」あっけらかんと言い放った一言に「そうだなー、そうしよう。」一同から賛成の声が聞こえた。熱燗の要領でタブを少しだけ開けてから缶ビールを温めた。程よく温まったところで、場を代表して私が一口ゴクリと飲んだ・・・。
「ブッハーーッ!」思わず吐いた。「なんじゃコレ!」炭酸が抜けた液体は異臭を放ち、明らかな毒素のように体が拒否反応を示したのだった。ビックリした。この世で一番旨い液体のはずのビールが、こんな激マズに変化するとは!他の連中も恐る恐る口に運んだが、一様に「不味い!」の大合唱だった。その日の経験から、もう2度と「ホットビール」は飲むまいと心に誓った。