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BuriareosuのMILU日記
タイトル 人間やめますか?   おすすめ(4) 2012-01-30 01:04:00

 人間やめますか? それとも・・・ 

 

 70を超える老夫婦。疾病名は不問としてもらいます。

 奥様は病院の入院者で旦那様は毎日付き添っていました。

 

事件は半年前に起こります。旦那様が奥様の首をしめ、殺そうとした。

看護師はスグに見つけ静止させます。

 

 「どのような状況だったのですか?」

 

 「許してください・もう・死なせてあげてください・・って何度も言って、

泣きながらだったよ 」

 

 「そうでしたか・・看護の状況は?」

 

 「う~ん・・・厳しいかな。人を認識する力はほとんど無いのよね。

   少しづつ崩れて行く奥さんに付き添うのが絶えられなかったみたい。」

 

 夫婦として共に70を過ぎるまで暮らした日々。

 二人の数限りない思い出。そして、二人の歴史。

 頑張ってきた二人の人生後期に訪れた顛末。

 妻の状況をみかねて手をかけようとした夫。

 

 このような現実は許せない。医療は一体何をしているのだ。

 我々は何をしているのだ。

 

 この疾病の痛みは並大抵の痛みではない。人が知る痛みを更に

 数十倍にし、それが継続されると考えれば、その痛みに耐えられ

 る「人間」はこの世に存在しない。

 

昔の人は我慢強いと言うが、我慢をすれば「もがき苦しみ」薬を使えば、

副作用でも苦しい。

 

私はセラピストとして患者の意識の安定している時を見計らって

5分でも10分でもコミュニケーションをはかりに行った。また、

旦那様の心の苦痛の軽減にアプローチする。

 

 未熟なMSW(ケースワーカー)は、家族との会話に勤めた。

 

医師はこのケースについて医療の限界に苦悩しつつ投薬コントロールを

指示、痛みの軽減に努める事を医療方針に掲げた。

看護師達は毎日の観察と声かけを絶やず、介護士もバックアップを図る。

 

 「殺してください・・・・お願いです。・・・・・

  これ以上、夫に私の姿を見せたくないのです。」

 

マダラな認知の状況が時折、正常の姿を浮き彫りにさせ、それを聞くもの

の心を惑わす。たとえ、ターミナルに慣れているハズの現場であっても、

そこで働くモノが、人の心を無くしているわけではない。

 

どんなに、プロフェッショナルであっても、ハラハラドキドキであって、

「私を殺してください」と言われる事に、慣れるモノなどいないのだ。

 

 「妻の苦しむ姿を見ているのが辛い。もう・・・充分です。

  終わりにしてあげて下さい。楽にしてあげて下さい 」

 

 家族の声を聞いてMSWは苦悩していた。

 

 「ブリちゃ~ん・・・どうしよう・・・」

 

「どうしようではなくて、そのままドクターに伝え、医療方針

  に加わって下さい。」

 

 「加われば意見も言わなきゃ、いけないじゃないのぉ~」

 

 「当たり前ですよ。看護科もリハビリ科も薬科も加わるのですよ。

  それぞれの意見を言わなくては意味がありません。○さんが統括

しても可笑しく無いのですよ。」

 

 「じゃぁどうするのよ。薬のレベルを上げるって事になっているんだから

  良いじゃ無いのぉ~それとも殺してあげるの?そんな事出来るわ

  けないでしょ。医者が全てを決めればいいじゃないのぉ~ 」

 

 「ドクターの見えていない部分を、私も、ナース達も見ているのです。

医者だけに責任を押し付けるのは良くありません!たとえ最後に

判断するのが医者であっても、材料を提供しておくのがチーム医療です!」

 

 「そんな事ぉ~私のほうが専門だからぁ~ブリちゃんよりかぁ~知ってるゥ~

  チーム医療とはねぇ~・・・えっとねぇ~・・」  (アホが移る・・わい!)

 

 安楽死・・私の脳裏にそんな言葉もよぎった。日本では許されていない。

これが許されない訳には色々ある。(今回は触れません・省略)

 

 そして・・・・・

 

 薬の投与コントロールが行なわれることになった。「0000000」

 日本では一番強い薬である。この薬が効かなくなると、もう次が無い。

 命が尽きることが前提であり、それまでの間をコントロールする。

 

 強烈な覚せい剤ともいえる。

 

 「人間を辞める事に等しい・・・」(このコピーもフレーズも私は嫌いだ)

 

 熊谷が38℃を記録し、木陰が涼しげな雰囲気をかもし出す真夏。

 この暑さにも関わらず、旦那様は足しげく病院へ通ってくる。

 

 「毎日エライですね。」

 

 「私の奥さんですから。元気な頃はスイカが好きでしてねぇ」

 

 「そうですか。・・それで半身のスイカをもってきたのですね。喜びますね。」

 

 「ブリオ先生も後でいかがですか」

 

 「私はご遠慮いたします。ご夫婦での時間を邪魔したくありませんから。

 ご主人。後ほど、心診療室へ来てくださいね。話をしましょう。」

 

夫婦にニコヤカな笑顔が戻っていた。ご主人は奥様の身体を拭き、

髪をとかし、二人で一日中窓から見える緑を眺めていた。

 

 「ブリちゃん。奥さんあれで、良いのかなぁ・・・」

 

 「なぜですか?」

 

 「だって・・・前は、マダラだったのに、今は笑う事しか出来なく・・・」

 

 「ボーっとしてしまう方も大勢いるのに、笑う事が出来ているのです。」

 

 「そうかなぁ・・・口も聞けなくなっちゃったし・・」

 

 「その疑問は、○さんが成長したという事です。」

 

 「何も判らなくなっちゃったんだよ・・・・きっと・・・

  半年ぐらいの余命だったんでしょ。 」

 

 「・・・・・」

 

 そんな事は無い。何もわからなくなったなんて、そんな事、

 私は信じない。

 

 痛みを取り除く、患者の希望を叶える、チーム医療の意義

 「人を支える」その言葉のなんと、薄っぺらい事か。

 

 多くの疑問と議論と感情を覚えながら、誰もが

 「また何も出来なかった」そう思ったのだ。

 

 夏の緑を愛でる夫婦がうつる部屋の窓を見上げながら。

 

                          ブリアレオス

 

カテゴリ:その他 > その他
コメント(2)
ベルいちご 2012-01-30 01:23:59  
何も出来なかったという事はないと思います。
ご夫婦の気持ちに触れることで、ご夫婦が救われることもあると思います。
日々、色々なことが起こります。
その時、現実に目をそむけたくなることもあるけれど「生きていたい」「生きてほしい」と思う心を大事にしたいですね。
口がきけなくなっても、わからなくなったとは思わないです。気持ちは伝わるはずだもの。
アンル 2012-02-06 20:13:59  
すごいですね。興味深く読ませていただいています。
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