死後の世界
彼女は「○○」で余命幾ばくもない60歳代の女性。
「痛い!痛い!苦しい!私、死ぬんですか・・・」
夜毎彼女の訴えは続き、看護婦を悩ませていた。
彼女には見舞ってくれる家族は誰もいない。
誰だって死ぬのは怖い。一人ぼっちだったらもっと怖い。
私は、「カウンセラー」として彼女の病室にいた。。
具体的なカウンセリングはともかく、そばで数分でも
話しをすれば辛い気持ちも少しは和らぐだろうか・・・・
「 気分はいかがですか? 」
「先生死ぬのは怖い・・・死んだらどうなるのかしら・・」
「え?」
何て言ってあげれば・・・良いかな。。
「先生!私!怖い!先生はたくさん死んだ人をみているから
わかるでしょう・・死んだらどうなるの? 私!怖い!」
「私は、死んだ人はたくさん知っていますが・・私が、死んだわけじゃ
ないですから・・・あの世がどうなっているかは、わからないのです。・・」
「そうですよね。・・・・・・」
「・・・・」
「でも・・・世界中で「死」について語られています。「死」とは
皆どこか似た言い方をされているんです。 」
「どんなですか・・」
「えーっと・・」
「
死ぬとまず・・・
ブーン・ブーンってうるさい音のする細いトンネルを抜けて・・・
しばらくすると、自分が天井に浮かんでいて・・・・
下には自分の体が横たわっている!(ハハハハ)
ああ・・死んだのかっておもっていたら・・・
明るい光に包まれてとっても幸せな、守られているような気持ちになる
らしいのです。・・・・
でもってね。。走馬灯のようにいままでの自分の人生が目の前に現れて…
ああ そうか 自分の人生ってこんな意味があったんだなって・・・
良い事も、悪い事も、みんな、意味があって、偶然って何一つ無かったん
だなって思えるのです。
それでですね。。
・・・・・・
あんまり幸せで、もう元の世界に戻りたくないって感じるそうなんですね。
そこには苦しみも、痛みもなく、この世で手足が不自由だった人も治り、
逢いたい人にもいつでもすぐ逢える。
そして、その人がこの世に生まれる前に住んでいた村へ帰って行く。
この話し、本当か嘘か、わからないんです。
キリスト教にも仏教にも同じように死後の世界は出てきますので、
信じる事で怖くなくなるのなら、信じてみるのも、良いかもしれませんね。」
私にはこんな知識は無かった。どっかの本を丸々暗記して何かの時にでも
使ってみようと思っていただけだった。
そもそも、こんな一方的なカウンセリングの手法は邪道でもある。
しかし、こんな私でも神を信じて仕事をしている。せめて、死後の世界が
あっても良いでは無いか。
「私は・・消えて無くならないのですね。」
「 当たり前です! 」
即答する私を見て彼女は笑った。
「 先生鼻水、お拭きになってください 」
笑う彼女を見て泣きべその私も笑った。
ブリアレオス