~ スタッフケア ~
私は仕事の合間をぬって
看護婦達と話をする事にしている。
実はこれも、私の仕事の一部である。
救急と、かけもちながらの診療室。
救急で運ばれる急患へのメンタルケア。
家族に状況を的確に伝える家族ケア。
そして、スタッフケア。
救急の場面にも精神科医(心療内科医)や
臨床心理士が存在する事を知る人は少ない。
医者でないからこそ、重宝する場面も少なくない。
「ブリオ先生!私!引越しして住所かわったの。」
「住所変更はしましたか?」
「まだ。。。だって9:00~5:00だよ。お役所って。。。」
私はこの娘達の労働状況を知っている。ここで否定の言葉は
使いたくなかった。看護婦という業務が過酷である事は、世
間的にも理解されている。。。
この娘は先日業務中に持ち場を10分離れ、その結果、患者
・家族からクレームがでていた。わずか10分の理由とは。。
聞き取ることに何の手法もいらなかった。。。
「ダンナに印鑑登録をお願いしたんだけど。委任状の
筆跡がどうとかで、、、結局、役所から職場に電話が
かかってきちゃって。本人確認が必要なんだって。
お役所の人って、どうして、あんなに融通がきかないんだろう。。」
人は自分の都合で生きている。役所が土日祝日・9時5時の
仕事であるという事実よりも、朝は明け方!夜は深夜まで
休みもほとんど無く、勉強会やら研究発表やら、
毎日の業務に追われ自分自身のプライベートまでをも犠牲に
せねばならない。そんな仕事が世の中にあることの方が・・・
可笑しな事なのかもしれない。
「 ○さんは4年目でしたね。何故、看護婦(師)という仕事を
選んだのですか? 」
「 う~ん。。私、いつも、人の為に何かやって自分が損しちゃうんです。
中学のときも高校の時も。。。
(リストカット症候群:私は彼女の左腕に多数ある、ためらい傷を
前々から気にしていた。どのタイミングで言葉にするか…)
「 入院経験が看護婦の道を選ばせたのですか?(笑) 」
「 ・・・・ 」
「 私ね。終わってしまうはずの人生だったんです。でも、私でも
誰かの為に生きられるかと思って。 」
(忙しい毎日であっても自分を必要とする場所で精一杯生きる。とても
前向きな彼女がそこにいる。。。私の専門知識は必要が無い。)
「 駅前の新しくできた、パスタ屋さんに、皆で行くのですが、今回は
落ち込みやすい○先生のおごりです。ご一緒しませんか? 」
「 え? 。。。はい! ブリオ先生。○先生のおごりを
勝手に決めちゃって良いの? 」
「 いいの。いいの。だって、私 S ですから 」
「 え ? 」
ブリアレオス